『言葉』を侮る勿れ

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俺は誰よりも悔やんで、許しを乞うた。そのお陰でこの変な空間が出来上がり、俺は本に埋もれながら臙脂色の和綴じ本に話し掛け、度々来る人間の相手をするようになった。 そいつらに『言霊』を売り、その対価として各々の負の感情を吸収する。負の感情も俺の中でどんどん降り積もりながら、懺悔させようとする。 永遠の時の中で、どれだけ許しを乞えるだろうか。俺の手にある臙脂色の和綴じ本に眠る、は……俺を嘲笑っているだろうか。 百年の時を経ても青年の姿から老いない俺を。 それでも彼女への懺悔となるのなら、俺は喜んで引き受けよう。 俺は次に現れる客を想像して憂鬱になりながら、和綴じ本を胸に抱いて、目を閉じた。
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