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「どこだよ……ここ。あ、スマホでって、は!?」
鞄からスマートフォンを取り出すと画面は光ること無く、真っ暗なままで固まっている。どれだけ叩いても無駄で諦めるしか無かった。このままでは本当に道草というだけでは済まない。このまま失踪届を出されては困る。
僕は足を速めて辺りの集落を見渡す。どの家の屋根も瓦で平屋。厳しい風貌のものばかりで気後れしそうになっていると、砂道の先にボーッと灯りが見えた。目を凝らすと家の中から付いているようで、僕はそこに辿り着く為に駆け出した。
着いた家屋に表札は無く、インターフォンも無い。誰かが住んでいるのは確かだったけれど人気は全くしなかった。不気味に思いながら磨りガラスの引き戸の前に立ち、それを叩いた。
「入って良いよー」
不真面目さ漂う気の抜けた男の声がして、恐る恐る引き戸を引いた。玄関には下駄が一足揃えてあり、そこから覗く廊下の突き当たりから灯りが漏れているのが分かった。一応断りを入れてから僕もローファーを揃えて、上がらせて貰った。
軋む木の床を通り、灯りが漏れている部屋の前まで来た。微かに影が揺らめいているのが分かる。
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