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小兎は就活中
暑い…とっとと就職先を決めて、このスーツを脱ぎ捨てたいよ。
5月中旬の今、内々定をすでに1社からもらい、今日はもう1社の面接があった。でも本命会社の面接は6月1日で、内定者には翌日通知が来るらしい。
「ただいま」
「おかえり」
「愛兎、なんでいるの…あっ、中間テストか」
「うん…」
習慣でただいまとは言ったが、誰もいないと思っていたリビングに愛兎がいて少し驚いた。リビングかダイニングでしか勉強しない愛兎の横を通りすぎ、部屋で下着まで全て着替える。はぁ…すっとした。洗濯物をまとめて抱えてから、片手で取り出したスマホの電源を入れつつ洗面所まで歩く。
いくつかメッセージが来ているようだが、ワンピースのポケットにスマホを入れ手を洗うとキッチンへ行った。お茶を大きなマグカップにたっぷりと入れたところで
「ねぇね、牛乳」
愛兎がシャーペンを置いて短く言う。牛乳が何?と思わないでもないが、まだ‘ねぇね’と呼んでくれることに免じて許す。友達の前では‘姉ちゃん’と言っている可愛い弟だ。
「私ビスケット出すけど、いる?」
「いる」
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