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「ねえ、ママ! このねこさん、かわいい!」
女の子の声がして、ミルちゃんとタジーちゃんは目を覚ましました。
見上げると、大きなふたつのキラキラした目がこちらをのぞいていて、2人はあわてて子ねこの陰に隠れました。
人間に姿を見られては大変と、人間から見えなくなる魔法をお月さまにかけてもらっていたことを、2人はすっかり忘れていたのです。
「にゃー」
子ねこは鳴いて、頭の毛をくしくしと前足でとかしました。
それを見ていた女の子に、ぱあっと笑顔の花が咲きました。
「ねえ、ママ。この子、飼ってもいい?」
「どうしようかしら……」
「でも、私、前から新しい家族が欲しいって言ってたでしょ!!」
「……そうね、いいわよ。おうちに連れて帰ってあげましょう」
「やった!」
女の子はそう言うと、子ねこを抱きかかえました。
「今日から私の家族よ、ねこさん」
そうして子ねこは、女の子に抱かれたまま行ってしまいました。
ミルちゃんとタジーちゃんは、段ボールの陰から、女の子の姿が見えなくなるまでそっとその様子を見守っていました。
「わたしたちに願い事をしたのは……」
「あの女の子だったんだね」
「それに、あのねこさんも」
「ふたつの願い事だったから、」
「2人いっしょだったんだね」
ミルちゃんとタジーちゃんが叶える願い事は、
『新しい家族が欲しい』
だったのです。
願い事をかなえることができたミルちゃんとタジーちゃんは、温かな気持ちでお空の上へと帰っていきました。
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