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「なんなのあの生徒会長!いくらなんでも初対面のハル君に対して馴れ馴れしいでしょ!」
「落ち着けって、声がでかい」
告白騒ぎの後、なんとか入学式を終えた遙希と悠は大講堂を出て、寮へ向かっていた。周りには同じように寮へ向かっている新入生たちがいるのだが、遠巻きに向けられる無数の視線が痛い。
高等部の王として君臨する煌の求愛を受けたにも関わらず堂々と断った新入生として、遙希はすっかり注目の的になってしまっていた。
「そりゃあさ?ハル君みたいな人に会ったら好きになっちゃうのわかるけど」
「いやそこがわからねぇよ…」
確かにこの世界の自分の顔はある程度綺麗だけれど、他人を一目惚れさせるほどのものだとは思わない。
首を傾げる遙希に、悠は小さくため息をつく。
「もう、相変わらず無自覚なんだから…」
校舎前の噴水広場を横切り図書館を横目に進む。左手に現れる大きな建物が、今日から遙希たちが生活することになる学生寮だ。
一階は広々とした食堂になっていて、大きな壁掛けのテレビと、雑誌の置かれた本棚、奥に学年ごとの掲示板が設置されている。
昼休みにはまだ少し早いため、今は新入生たちが掲示板の前に集まっているだけで、二年生や三年生の姿はなかった。
「部屋割の確認しなきゃ。同室の人、いい人だといいなー」
寮で生活する三年間、部屋は二人一組で同じ部屋を使うことになっている。性格の不一致など本人たちの希望があれば部屋替えということもあるらしいが、基本的には三年間ずっと同じ相手と過ごすことになっていた。
掲示板に貼り出されている部屋割の表の中から、遙希は自分の名前を探し、角部屋に「柏谷遙希」と書かれた一室を見つける。
「…あれ、俺しか名前書いてない」
「うそ!ハル君一人部屋なの?」
その学年の生徒数が奇数だった場合、一人部屋になる可能性があるということは、事前に説明されていた。しかし、数十部屋もある中のたった一部屋を自分が引き当てるとは、思ってもいなかった。
「え〜いいなぁ、いっぱい遊びに行っちゃお」
口を尖らせる悠に思わず苦笑する。
「同室のやつとも仲良くしろよ」
遙希は内心安堵していた。BLゲームの世界で、主人公の自分が男と同室になるなど、恋愛関係に発展するフラグでしかない。それに一人であれば、この世界を友情ルートで攻略するための調べ物にも集中できる。
これは幸先がいいかもしれない…と思いながら掲示板を眺めていると、人混みをかき分けて遙希の元へ進んでくる人影があった。
「お前が柏谷遙希だな」
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