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「啓人がいると、凛と隼が楽しそうだわ」
不意に、後ろから母に声を掛けられる。
「啓人、お酒飲む? あなたが好きな甘い味のお酒あるわよ」
「あ、うん。じゃあ一本もらおうかな」
母から缶チューハイを受け取り、一口飲む。
母は俺の隣に座ると「最近、仕事はどう?」と尋ねてきた。
「仕事は……まあ楽しいよ。大変なこともあるけど……」
「それならいいんだけど……。有也君も一緒の職場だしそんなに心配はしていないんだけど、今日の啓人、いつもより少し元気がないように見えたから」
「……明るく振る舞ってたつもりだったんだけどな」
「ふふ。双子の目は誤魔化せても、私の目は誤魔化せないわよ。何かあった? 聞いても良ければだけど」
「……」
どこまで話すべきか分からず、言葉に詰まる。
だけどやっぱり、少しでも話を聞いてもらいたくて俺は再び口を開いた。
「……仕事辞めた方がいいのかなとは、思ってる」
俺の言葉を聞いた母は、一瞬の間の後、ゆっくりと頷いた。
「そう……。詳しいことは聞かないけど、無理することはないと思うわ」
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