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数日後ーー。
俺は、とある資料を持って営業部長のデスクに向かった。
「部長。今、お話ししても大丈夫ですか?」
そう問い掛けると部長は、面倒臭そうな表情で「何だよ」と答える。
営業部長はオメガのことが嫌いなので、俺にも例外なくいつも厳しい。
これから俺が話すことをしっかり聞いてもらえるか、不安もあるがーー俺はゆっくりと言葉を紡いでいく。
「こちらを見ていただきたいんですが」
俺は手に持っていた資料など数枚を、部長のデスクにスッと差し出す。
その紙にチラッと視線を落とした部長は、途端に目を丸くさせた。
「こ、これ、どうしたんだ⁉︎ S食品の契約書じゃないか!」
俺が部長に差し出したのは、先日、竜崎さんも頭を抱えていた例の食品会社との契約書だ。まずはお試し程度ではあるものの、正真正銘、うちの商品との契約を交わす書面だ。
「お前が契約を取ったのか⁉︎ 一体どうやって……まさか、オメガってことを利用して身体でも使ったんじゃないだろうな? そうじゃなきゃ、オメガのお前にこんな大口の契約が取れるはずがない! まあ、会社の名前に傷が付かない程度なら構わないけどな、ははは!」
部長の声に反応して、周囲もザワザワしながらこちらを見ているのが分かる。
でも、怯んではいけない。
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