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そんな部長に、俺はこう答えた。
「分かりました」
「そうか。じゃあ早速、引き継ぎをーー」
「その代わり、オメガと番になったアルファへの業務評価はこれまでと変更せずにいただけないでしょうか?」
「は?」
部長は明らかに不機嫌な顔でこっちを睨み付けるが、俺は構わずに話しを続ける。
「オメガと番になったアルファが正当に評価してもらえなくなるなんて、おかしいと思います。オメガにとって、自分と番ってくれるアルファの存在は凄く大きくて……人生を救われると言っても過言ではないんです。そんなアルファが、どうしてそこまで不当に扱われてしまうんですか?」
「番に発情期が訪れれば、パートナーのアルファも仕事を放り出す可能性があるからだ」
「竜崎さんはそんな人じゃありません。俺も、発情期は番に頼らず、一人で乗り切ると約束します」
「うるさいぞ! 俺に意見するんじゃない! オメガのくせに!」
「……本当は、番のいないオメガがクビになる件についても納得いってはいないんです。でもせめて、番になるアルファへの評価については見直してくれませんか! それが無理なら、俺は三月を待たずに仕事を辞めます。ただ、S社との契約はまだ完全に結ばれてはいないので、俺が今辞めたら、この契約は白紙になります」
「お前……上司を脅す気か!」
部長は激昂して、デスクチェアからガタン!と大きな音を出しながら立ち上がる。
「いい加減にしろ! ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと契約だけよこせ! 辞めたきゃ辞めろ!」
すると今度は、デスクにいる竜崎さんへと視線を向けて口を開いた。
「おい、竜崎! お前、河野と付き合ってんだろ! お前からもこいつに何か言え!」
名前を呼ばれた竜崎さんはその場からゆっくりと立ち上がり……そして俺と部長の元へと歩いてくる。
「はい、すみません。河野さんが自分一人で部長と話すと言い張るので、僕はとりあえずデスクから見守っていたんですが……
まず、俺の番に対してお前呼ばわりするのをやめてもらっていいですか?」
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