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「何か飲むか?」
「いえ……」
「そう?」
そんなやり取りをしつつ、とりあえずリビングのソファに腰掛けさせてもらう。
竜崎さんも俺の隣に腰をおろすと、ゆっくりと言葉を発していく。
「昇進うんぬんの話は、確かに以前、営業部長から聞かされた。啓人に話したら気にすると思って、とりあえず黙ってた」
「……そうだったんですね」
「そもそも俺自身、そんなこと言われても全く気にしてなかった。オメガの番がいてもいなくても、誰にも文句言われないくらい仕事頑張ればいいだけの話。この仕事は好きだから、頑張るのは苦じゃない」
「だ、だけど、頑張ったら必ず報われる保証もなくなるってことですよね⁉︎」
俺は竜崎さんのことが好きだけど、それ以上に彼がどれほど仕事の出来る優秀な人かということも分かっている。
竜崎さんは、会社のためにも彼自身のためにも、もっと上を目指すべき人間だと思う。
それなのに、俺の存在が彼のハンデになろうとしているなんて……。
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