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「竜崎さんの足枷になるくらいなら……俺が仕事を辞めます!」
俺もこの仕事は好きだ。
それでも、俺の存在のせいで竜崎さんの仕事に悪影響を及ぼすくらいなら、いなくなった方がマシだ。
「啓人が仕事を辞める必要なんてないだろ!」
それまで落ち着いた様子で話をしていた竜崎さんが、そこで初めて口調を荒げた。
「でも……」
「でもじゃない。俺のためにそう言ってくれてるのは分かるけど、軽々しくそういうこと言うな」
「軽々しくなんて言ってないです……」
俺は竜崎さんに、俺のために自分を犠牲にしないでほしい。
二人の間に、気まずい沈黙が流れる。
その沈黙を先に破ったのは、竜崎さんだった。
「悪い。ちょっと言い方キツくしちまったな。とりあえず、やっぱり飲み物淹れるから待ってて」
そう言って、彼はソファから立ち上がってキッチンの方へと向かっていく。
彼のお陰で、気まずい空気はいくらか晴れた。
……でも、これ以上考えてもきっと、俺の考えは変わらないと思う。
かと言って俺が仕事を辞めても……竜崎さんは喜んでくれない気がする。それどころか、自分のせいで俺が仕事を辞めたと思い込ませてしまうかもしれない。
それは、嫌だな……。
その後も竜崎さんと話し合いを続けたけれど、やはりお互いの意見は食い違うばかりで、何も解決はしないままだったーー。
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