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ーー…
竜崎さんとは何となく気まずいまま数日が経ち、今日は土曜日。
午後、俺は久し振りに……実家を訪れた。
「待ってたわよ、啓人!」
インターホンを鳴らすと、母が笑顔で出迎えてくれた。
実家と言っても同じ都内で、俺が一人暮らししているアパートとそこまで離れてはいない。
実家から会社に通うことも可能ではあったが、有也が会社の近くで一人暮らしをしているのを見て、俺も一人暮らしがしてみたいと思ったのだ。
とは言え、休日には実家にもなるべく顔を出すようにしていたけれど、最近はあまり来れていなかったなと密かに反省する。
家に入るとーー。
「お兄ちゃん!」
「お兄ちゃん、お帰りー!」
現在八歳の、歳の離れた双子の妹と弟が駆け寄ってきてくれた。
「ただいま、凛、隼!」
俺の家は父と母、妹の凛と凛の弟の隼、そして俺の五人家族だ。
父はベータで、母はオメガ。双子の二次性別はまだ判定前。
父は単身赴任中でなかなか会えないが、母と同じく優しい人だ。
「お兄ちゃん、遊ぼー」
「隼、ずるいー! 凛もお兄ちゃんと遊ぶー!」
「うんうん、三人で遊ぼうな」
そうして夕方まで三人でたっぷりと遊んでから、皆で食卓を囲んだ。
父は不在だが、久し振りに家族でワイワイ食べる食事はとても楽しかった。
それから双子と一緒に風呂に入り、二人が寝静まってから、俺は縁側で夜風に当たりながらボーッとしていた。
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