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ジュリアンの気づき
私はしばらく何かが気になっていた。喉の奥に何かがひっかっている様な、ハッキリとしない何か。私はそれ感じた時まで記憶をさかのぼりながら思い出していた。
ルカが一緒に王都に行くと言った。シンがお前のところに現れたのはなぜかと言った。何か理由があるのかと。
私は思わず立ち上がっていた。そうだ。そもそも何故シンは私の目の前に現れたんだ。正確に言えば、私の屋敷、温室だ。そこに何かシンを引き寄せる何かがあったとでも言うのだろうか。私は居ても立っても居られない気分で、ウロウロと幕内を歩き回った。
私は執事宛に手紙を書いて送った。温室にある構造物全てのものの確認と手に入れた時期のリストを作る様にとの手紙だ。
私は砦の景色を眺めながら、1日でも早く屋敷に戻って温室に駆けつけたい気持ちで一杯だった。
それから暫くして、団長からの命で私とルカは砦を後にした。私達を見送る騎士達や兵士長、兵士達の表情が冴えないのはいかしかたがないだろう。私は胸の奥で、次にここを訪れるときにシンと共に来ることが出来たら他に何も要らないとそっと息を吐いた。
ルカは私の気持ちを知っていて触れない様にしているのか、素知らぬフリで王都の最近の噂話を面白おかしく話していた。
王都に戻ると、私は急いで屋敷に向かった。玄関に迎えに来ていた執事が、私と歩きながらリストの説明をした。聡い執事の事だ。これがシンと関係がある事に気づいたんだろう。
シンが消えた事については私も簡単に手紙に触れていたし、ルカによれば団長からの王への報告によって、一部の貴族達の知る所となっている様だ。所詮、秘密というものには鍵を掛けることができないだろう。それが衝撃的な事であればある程に。
リストを眺めながら、温室にこれ程の物品の数がある事に驚いた。私の仮説が正しければ、私達はそれこそ片っ端から植木鉢の受け皿までひっくり返す事になるだろう。
そして文字通り、使用人たちは目の前に物品を並べた。私はひとつづつに目をやったものの、どうやって探して良いか途方に暮れた。シンをこの世界に呼び寄せた物、それがどんな物か分からないのに探すなど、ルカが聞いたら呆れて苦笑いしただろうな。
私はふと、シンが時々纏っていたあのモヤモヤとしたものを思い出した。あのモヤモヤが出る時はシンは何かを考え込んでいる事が多かった。そして、私が尋ねても誤魔化す様に話を変えたんだ。
もしかしたら…。私は目を閉じてシンの発するあのモヤに似た白魔法の波動を探した。微かだが、私の発する魔法に反応したものがあった。私は目を開けて、反応した物品の前に立った。
それは私が子供の頃から存在していた鷹の姿を模った石像だった。
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