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ジュリアンside運命の再会
王宮で突然姿を現したシンは、久しぶりに見たせいか以前より顔色も良く感じて、私の記憶の中のシンよりも美しかった。それはシン自身の美しさだったのか、シンの着ていた向こうの世界の衣装もそれを強調していたのか。
多分私が持ち歩いていた鷹の足元にあった白い宝玉に、予想通りにシンの帰還の軸は引き寄せられたのだろう。私は強く願っていたが、それが真実になると反対に信じられずに、ふらふらとシンの姿がハッキリするまで側に寄っていった記憶はある。
腕の中の、体温が感じられるシンにジュリアンと呼びかけられる、その奇跡に私は生涯で初めて神に感謝を捧げた。私がシンを離そうとしないので、呆れた王様達は1週間後に王宮に来る様に命じると離れ難い私達を解放してくれた。
私はシンを腕の中から逃したくなくて、馬車に乗ってもシンを口づけでこの世界と、私とに繋げることでいっぱいいっぱいだった。シンはそんな勢いの私を嫌がるどころか、同じように私を欲してくれたので、私は心からの幸福感と安らぎを感じた。
それからの事は時間の経過があまりはっきりしない。私達は会えなかった時間を埋めるように、只々溶け合いたかったし、お互いの熱を分け与えたかった。シンの窄みは会えない間にすっかり柔らかさを失っていて、それはそれで最初に出会った頃のシンを思い出して、私は心が浮き立ったのだった。
私達は再び会った。絶対に繋がらないはずの世界を超えて。これが運命でなくて何が運命だろう。
私とシンはコインの裏と表のように、決して離れてはいけない相手同士なのだと、私はシンの美しい夜を映す瞳から零れ落ちる涙を唇でなぞりながら囁いた。
シンはもう一粒ポロリと涙を転がして言った。
「僕はもともといた世界に帰った時に、戻れた喜びより、どうやったらジュリアンの隣に戻れるか、それしか考えられなかったんだ。僕の家族は側にいて優しくしてくれたけれど、僕の心はジュリアンに会えないかもしれない悲しみで泣き叫んでいたんだ。
こちらに戻れそうだって知った時、僕は嬉しくて泣いたんだ。僕は悲しみと喜びで泣いてばかりだった。全部ジュリアン、貴方のために流した涙だよ。愛してる、ジュリアン。」
そう言って微笑むシンはあまりにも美しくて、私は胸が騒がしく動くので胸に手を押し付けないと倒れそうな気がした。シンは目元に雫を光らせて、私の首に美しい指先を伸ばして自分に引き寄せると、二人が溶け合うような甘い口づけをした。
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