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白い宝玉
僕はジュリアンの手の中の白い石を見つめた。どう見ても、それは僕があちらの世界で神棚に祀っていた石の片割れとしか思えないものだった。ジュリアンは僕が黙って石を凝視しているのを見て、言った。
「これに触れて確かめたいのは分かるが、私にそんなリスクは取れない。呪文は必要とのことだが、万が一この石と共にシンが消え戻った場合、もはやこの世界との繋がりは途絶えるだろう。…そうしたら二度と私たちは会うことが出来ない。わたしはそれが怖い。」
そう言うとジュリアンはまた執務机の引き出しにそっと戻して、魔法の鍵で閉じた。
僕はジュリアンの行動を見つめていたけれど、立ち上がってジュリアンの少し痩せた背中にしがみついて言った。
「その石がなぜこの世界にあるのかという謎には興味はあるけれど、ジュリアンの側から離れたくはないよ。だからジュリアンが大事に持っていて。ジュリアン、僕を待っていてくれて、ありがとう。石を持っていてくれて、ありがとう。」
ジュリアンは僕の方を向くと、泣きそうな顔をして言った。
「あぁ、あの石のお陰で、この世界にシンが飛ばされてきたのは、間違いないんだ。私はその事に感謝しかない。私の手中にシンを捕まえさせてくれて…。シン、愛してる。」
僕はジュリアンの頬に手を伸ばして、ジュリアンの目の淵に溜まった雫を拭った。
「ジュリアン、すっかり弱っちゃったの?…僕が血だらけで、急に消えたせいだね。ごめんね、ジュリアン。…来て。」
僕はジュリアンの手を掴むと、ベッドへ連れて行った。そして座らせると、僕を凝視するジュリアンに悪戯な気持ちで微笑んで言った。
「僕がジュリアンを癒してあげる。…僕は向こうの世界でこっちに戻れる事を知っていた。でもジュリアンは僕が戻ってくるまで、ずっと苦しんでいたんでしょ?…ジュリアン、可哀想…。」
僕はジュリアンにうやうやしくそっと口づけていった。額に、瞼に、頬に、鼻に、顎に、耳に。少しでもジュリアンの心の傷が癒えるように。ジュリアンはゆっくり瞼を開けた。その瞳が金色めいて、輝きを増していた。
「シン、もっとだ。…もっと私を癒やしてくれ。」
僕はにっこりと笑うと、ジュリアンに跨ってその形の良い唇を吸った。柔らかくジュリアンの唇を食んでいると、ジュリアンの大きな手のひらが僕のシャツから背中へと潜り込んだ。それは僕たちの癒しの時間の始まりだった。
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