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二人の関係
私はシンを従者に、ひいては従騎士にすると宣言した。
護衛達が騒めくのを感じた。私は従者を持たない事で有名だったからだ。
この世界では騎士の従者、従騎士は、騎士にとっては唯一ただ一人、そして絶対のものだ。
それを知らないシンはキョトンとした顔だったけれど、すぐに跪いて言った。
「はい、頑張って務めさせていただきます。…私のあるじのお名前は…?」
まだシンが私の名前も知らない事に気づいて、私は久しぶりに声を立てて笑った。
シンとの出会いをなぞる様に思い出した私は、口元が緩んでいるのを感じた。
私は腕の中で微かに眉を顰めて身動きしたシンが、ゆっくり瞼を開けるのを見つめていた。
この瞬間は私にとってはたまらない時間だ。
以前は目を開けて直ぐに飛び起きたり、慌てたり、身体を強張らせて警戒してばかりだった。
シンがこちらの生活に慣れ、私という存在に慣れ、多分私を心に受け入れてくれた様子の最近では、身体は弛んだまま腕の中で大人しくしている。
それが何だか野性の動物を懐かせる事が出来た達成感を感じるようで、密やかな私の物差しなのだ。
閨の魔法がかかっていない時にも、こうして懐いてくれるとどんなに嬉しい事だろうか。
私はそう考えながらシンの滑らかな背中を味わうように撫でた。
僕の朝は早い。
従騎士たる者、あるじのために身を粉にして仕えるのだ。
とは言いつつ、昨夜の様な閨の番の後は少々辛い。
この世界では閨の魔法というものがあって、僕にはそれが効きすぎるらしい。
でも本当のところは、随分耐性が出て来て最初の頃のように夢か現かといった状態では無くなっている。
昨日のアレなんかは、元の世界でいうタガが外れるという状態のような気がする。
という事は僕はあの状態を好き好んでやってる事になる。うわぁ、僕の願望って恐ろしくエロい。
あるじには、魔法のせいだと思わせておかないと、もう顔を見れる気がしない…。自重しよう。
ぽやぽやと反省?しながら朝のルーティンを行いにフォーカス様の幕内に入った。
フォーカス様は既に起床されていて、ティーテーブルで羊皮紙を見ていた。僕は目覚めのティーを差し出して挨拶した。
「おはようございます、フォーカス様。良いお目覚めですか?」
フォーカス様はクスリと笑うと僕から目を逸らしてティーをひと口飲むと小さく息を吐き出して言った。
「あぁ、良い目覚めだ。昨日の眠り薬がよく効いたようだ。」
眠り薬というのは、僕とフォーカス様だけにわかる閨の隠し言葉なのだけど、側に下僕やら誰かしらが居ると気まずいのは僕だけなんだろうか。
僕は顔が赤くならないように、俯いた。
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