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店内は混んでいた。きっと和希と同じ理由で、でも私とは違う理由で。
「ごゆっくりどうぞ」
エプロンをつけた店員がメロンソーダとアイスコーヒーを置いた。去り際に私達を交互に見て微笑んだのは、そういう風に見えたからなのか。
(そうだと嬉しいな)
私達は窓際の角席に案内された。窓の向こうは一面の白い羽。明日晴れたら眩しいだろうな――なんて考えでもしないと、たぶん私の鼓動が聞こえてしまう。
「それ、ブラックで飲むの?」
和希が私のアイスコーヒーを指した。
結露したグラスのそばにガムシロップとシュガースティックが置かれている。私が頷くと、彼はそれらを取ってメロンソーダに入れた。
どろりとしたガムシロップと砂糖の粒がメロンソーダの中に沈んでいく。
「うわ……ショートケーキより甘そう」
「甘いのがいいんだよ。あと、痛いくらいの炭酸」
そう言って彼はグラスに直接口をつけ、甘過ぎるメロンソーダを喉に流し込んだ。対して私はストローで苦いアイスコーヒーをすする。
好みが違うと分かっているけれど、なんか悔しい。
私は炭酸が苦手だった。絶好のシチュエーションなのに、彼の甘いメロンソーダを私は飲めない。
「この様子だとかなり積もるかな?」
悔しさを忘れたくて話を振った。外を見れば一目瞭然なのに、会話をしたくて無意味な質問を投げかける。
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