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「この様子じゃ明日が悲惨だな。風で綺麗さっぱり飛んで行ってくれればいいけど」
「風じゃなくても回収車が綺麗にしてくれるよ」
「分かってる。相変わらずお前はロマンが無いね」
ロマン。ロマンチック。ロマンチスト。
和希という人間を構成する要素の一つ、それは彼がロマンチストだということ。彼は夢を語りたがる。そして叶えようとする。
すぐに諦め、線引きをして予防線を張る私とは大違い。ほら、探せばこんなにも違う。悲しい。
「……この羽、どこから来てるんだろう」
「空からだろ?」
「どういう原理で降って来るのかなって。雲は水蒸気……つまり水なのに、どうして水は降ってこないの?」
「そういう世界なんだろ。この世界の神様が、水の代わりに羽が降るよう設定したのさ」
「何のために?」
「さぁ?でも未だに原解明されていないんだから、そういうものとして認識するしか無いだろ」
――こういう時だけ妙に現実的なのはどうして?
羽が降ることより、私はその答えが知りたい。
「……ロマンチストのくせに」
「何か言ったか?」
「別に」
他愛もない話をしている間に、少しだけ羽の勢いが弱まってきた。羽宿りをしていた人達が恐る恐る白い世界に踏み出していく。
「空いたな」
「もう少しで止みそう」
「なんか悲しそうじゃん」
「うん、悲しい」
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