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「うぉぉぉぉ、遅刻するぅぅ!!」
俺は荻原蓮翔。いや、ここではレント・オギワラか。
ここは魔法世界にあるフェリキタースという国。科学の代わりに魔法が発展している世界である。身分差が結構大きい。そして、ここは、その国にあるハルモニア魔法学園。一学年300人程度と、とても大きい学園である。
俺は、神のミスとかで、地球から2ヶ月程前に転生してきた。そしてそのまま、色々あって、学園に通っている。
閑話休題。
今は始業5分前。つまり、遅刻ギリギリ。その為、教室へ向かうだだっ広い高級感漂う廊下を爆走中だ。ギリギリの為、すれ違う者は誰一人いない。教室の中から奇異の目で見てくる者はいるが。
そしてガラリと開ける。俺の通うクラス、1年S組の扉を。
「あ、おはよー」
「今日はギリギリだね」
「あと3分で先生くるよー」
俺に気づいた数人の生徒が声をかけてくる。俺は一人一人に軽く返事をしながら急いで席に着いた。クラスを見渡すと、もう全員着席している。ちなみに俺の席は一番廊下側の最後列だ。
「相変わらず、お寝坊さんね」
「うるさいな。たまたまだよ」
「あら、地球にいた時から数えると、56回目よ?」
登校早々、微笑を浮かべて毒を吐く彼女は、細雪結理亜…じゃなくて、ユリア・ササメユキ。清楚な美人で、サラッサラな髪は腰まで伸ばしている。そして、掛けている眼鏡が知的な印象を醸し出している。実際、頭が良い。彼女も転生者で、俺の幼馴染みだ。
そうこうしている内に、先生が入ってきた。
彼の名はブラーヴォ・ストラーノ。大体30代か?目が前髪で隠れていて、雰囲気は根暗に近いが、実際はとても優しい、良い先生だ。ちなみに髪は抹茶色。
「おはよう。ホームルームを始めるよ。日直さん?」
「はい」
隣のユリアが立ち上がった。
「起立。気をつけ。礼。おはようございます。着席」
ユリアの号令に合わせて挨拶をする俺達生徒。
クラス中でガタガタと椅子がなる。
「はい。今日は魔武器精製があるよ。ホームルームが終わったら、1時間目のチャイムに遅れないように魔法実技館に移動してね」
『はーい!』
生徒達の声が教室に響く。心なしか顔も輝いているように見える。
その後も1日の流れを先生がさらっと話すと、ホールルームは終わった。
「行くか、ユリア」
「ええ」
俺達は立ち上がると、他のクラスメイト達に混じって教室を出た。
「どんなのができるかなぁ?」
「俺は大剣がいいな」
「私は飴か鞭かしら…」
「え?それ、だれの躾をするの…」
「私、可愛いステッキがいいー!」
「ふふっ。リンちゃんは可愛いわね」
周りからは、色々な声が聞こえる。皆、楽しそうだ。変わった声も聞こえるって?…それは日常茶飯事さ。気にするな。まあ、俺も未だに気になるけどな。
そうそう、この学園、校舎がめちゃくちゃ広いから、休み時間は毎回20分ある。移動が大変だからな。それでも結構ギリギリだけど。
魔法実技館は校舎とは別の建物で、渡り廊下を渡った先にある。他の移動教室と比べても、そこそこ遠い。
「着いたわね。まだ少し時間があるわ」
入り口付近でユリアが口を開いた。
魔法実技館は、広さも凄いが、とにかく天井が高い。それこそぼやけて見えるぐらいには。そして、壁も床も一面真っ白。窓もどこにも無く、あるのは今入ってきた出入り口のみ。
俺達は、クラスメイトの集まっていた建物の中心に行った。周りは、親しい人と会話をしたり、ちょつとしたゲームをしている。じゃんけんとか。俺はユリアと話した。
「魔武器って、何が出来ると思うか?」
ユリアは少し考えて、
「そうね…授業では、作成者に一番合った物が出来るって言ってたし、本に、武器っぽくない物も出来るって書いてあったし…作ってみないと分からないわね」
と、答えた。
うわ、授業ちゃんと受けているのかよ。さすが優等生。しかも本でも知識を吸収しているし。この天才め…。
俺は、授業は半分寝てる。いや、完全には寝てないからな?本は…ここに来てから読んでないな。
そうですよ。どうせ逆恨みだ。全く努力しないで勝てるわけありませんもんねー。
地球では、異世界転生の漫画やアニメを見たりしてたけど…ま、そのおかげで魔武器についての知識は粗方あるがな。
「あれだよな。魔石ってやつに魔力を流したら、その石が光って、変化して、武器になるんだろ?」
俺が話すと、ユリアに呆れた様に見られた。
「レント…それ、地球の、しかも物語の中の話でしょう?一部合ってるけど、一部違うわ」
「え?」
ユリアはこれ見よがしにため息をついた。
ム、ムカつく…!
「ほら、授業を真面目に受けないから、そうなるのよ。いい?魔武器精製は、魔石をあそこの魔法陣に置いて、その魔法陣に魔力を流すの。そしたら魔石がボンッと音を出して、煙が出て、その煙が晴れたころに武器が出来ているって訳よ。分かった?」
「お、おう…」
思ってたんと、全然違った…。
「それから、作った武器は名前をつけて、名前を呼ぶと魔武器は現れてもう一度呼ぶと消えるわ。それから、名前をつけると、その武器の能力も分かるわね。色々あるみたい。こちらも作るまで分からないわね…」
ユリアはくるくると長い髪を弄びながら話した。
「あ、みんな集まっているね?じゃあ、授業を始めようか」
おっと、先生が来た。黒い鉱石っぽいものがいっぱい入った箱を抱えている。多分、あの石が魔石だろう。
カーン、キーン、クーン、ケーン
ついでにチャイムも鳴った。
…俺、思うんだ。このチャイム、色々とおかしいと。百歩譲って、コーンもつけて欲しかった。
ま、とにかく、授業が始まった。
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