14.忍び寄る影

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14.忍び寄る影

   グランパとグランマはなんて言うか、要するにやっぱりズレていた、そこらの祖父ちゃん祖母ちゃんよりも。 「困ったもんだ。マリサ、また孫が一人増えたよ」 「いっぺんに5人になった時も驚いたのにねぇ」  グランマが頬っぺたを突き出したから、リッキーも喜んでキスをした。 「でも、私、一つ条件があるわ」  ギョッとした。だってグランマは文句なく受け入れてくれると思ってたのに。 「ウェディングケーキは、私が焼いたパイにしてほしいの」 「マリサ、パイはケーキとは言わんよ」 「あなた、私のパイが気に入らなかったの?結婚してずいぶん経つけどそんなこと一言も言わなかったじゃない!」 「いや、だからウェディングケーキというのはだな、」 「私たちの結婚式は誰も呼べなかったでしょう? あの時、私が焼いたパイを美味しい、最高のウェディングケーキだと言ったのはあなたよ。 あれは嘘だったの!?」 「グランマ、グランマ! 僕たちパイでいい! いや、パイがいい!! グランマの作るパイは最高だよ、な、リッキー!」  助けてくれ という僕の悲鳴にリッキーは笑い転げている。 「グランマ、俺もパイがいいです。最高の結婚式になります」 「言い直しよ、リッキー」 「は?」 「言い直し」 「あの……パイがいいです」 「だめ、不合格」 「えと、パイが好きです」 「やり直し」  今度はリッキーが助けを求めてきた。僕も何がやり直しなのか分からない。 「リッキー。あなた私たちの何になるの?」 「……家族です」 「そうよね? じゃ、こういう時、なんて言うの?」 「……ありがとうございます」 「違うでしょ?」 「嬉しいです」 「また間違えた」 「……興参です! 教えてください!」 「宿題にしようかしら。式はお預けね」 「それは困る! 今教えて、頼むから!」 「合格」 「……どこが?」 「分からないの? 家族はそんな他人行儀な言葉は使わないものよ」  あんまり嬉しくって、リッキーはグランマに跳びついて抱き上げた。 「ありがとう! ありがとう、俺も大好きだよ、グランマ!!」 「プレゼントをやろう」  やれやれ という顔でグランパが言い出した。 「え、いいよ! そんなことしなくても」 「お前たちにあの離れをやる」 「でもジェフが……」 「あれは私の物だよ。あの子には四の五の言わせん。こっちに来た時はあそこに住みなさい。好きなように変えるといい。内装の費用も半額プレゼントしてやろう。その代わり片づけと残りの資金の調達は自分たちでやりなさい。ジェフがゴチャゴチャ言わんうちに権利譲渡の手続きをしておこうか」  あの子……ジェフもグランパにかかっちゃ形無しだ。 「あそこ、二人の大事な思い出の場所でしょ? なのに」 「だからだよ、フェル。お前たちに大事なものをやりたい。それがプレゼントってもんだ。大事に使っておくれ」 「たまにはお茶に呼んでちょうだい。パイを持って行くから」 「お前はパイのことしか言わん」 「あら、美味しいと言ったのはあなたよ」 「言わなきゃ良かったよ」   
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