14.忍び寄る影

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   「お前、恵まれてるよ」 「なんだ、他人事みたいに言うなよ、全部お前のものにもなるんだから」  リッキーはまだ実感が湧かないらしい。 「ウソみたいだ! まだ信じらんねぇよ。まさか今日ここまで話が進むなんて思ってもいなかった!」 「実は僕も今日はジェフにOKもらえないだろうと思ってたんだ」 「お前、頑張ってくれたから……とうとう俺のこと、何も話さずに承諾させちまった……どうなるかってハラハラしたけど、全部お前のお蔭だ」 「頑張るのは僕の役目だからね。お前は『リチャード・ハワード』って間違えないで言えるように頑張ってくれよ」 「リチャード・ハワード……ウソみたいだ、フェル!!!!」  まず、大学に戻ろう  そう二人で決めた。  ジェフに言われたことは尤もだ。世間は甘くない。綺麗事じゃ暮らしていけない。それに社会に出るまでの猶予期間が出来たことで、僕らはきちんとした生活設計が立てられる。何もかも見越したジェフのアドバイスのお陰で、僕たちには現実が見えてきた。     楽しいことを考える余裕も出来た。式に誰を呼ぶか。いつにするか。  今は夏休み。サマースクールの申し込みはもう無理だけど勉強もしなくちゃ。  7月25日に大学に戻って、7月中にリッキーのバイトを決める。そこからはお互いに働きながらこれから先のことを決めていく。  リッキーはこれまでの送金にあまり手をつけていなかった。行動が制限されていたから使いようがなかったんだ。だからここで援助を打ち切ってもある程度の生活費はある。  問題は僕だ。実は学費だけはこっそりグランパが出してくれていた。 『大学は出た方がいい』  それはジェフと同意見だったから助けてくれたんだ。けど生活費は自分で作らなきゃならなかった。  これを機会にリッキーも働きたいと言い出して、僕らは一緒にバイトすることにした。  本当にやること、考えることがたくさんある。 「式はいつがいいかな。フェル、誕生日はいつ?」  楽しそうなリッキーの声。 「悪い、もう過ぎた」 「……うそ……」 「ほんとだよ、4月だから。リッキーは?」 「4月のいつ?」 「8日。どうかした?」 「それって……俺たちが初めてセックスした後だよな…」  思い返してみる。 「そうだな、シェリーにばれた後だから」  みるみる目が潤んで僕は焦った。 「嫌いだ、フェルなんかフェルなんか大っ嫌いだ!」  何が起きたのかさっぱり分からない……飛び出して行ったきり、1時間も戻って来ない。あちこち探して、家に行ってみた。 「母さん、リッキー来なかった?」 「さっき見かけたけど。どうしたの?」 「それが……」  経過を聞いた母さんが笑い始めた。 「それはあなたが悪いわよ」 「どうして!」 「考えなさいな。私は教えない」  なんでこんなことになるんだよ。 「少し時間いい? リッキーなら心配ないから」  何をもってして大丈夫だと言えるのか?   
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