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「お前、恵まれてるよ」
「なんだ、他人事みたいに言うなよ、全部お前のものにもなるんだから」
リッキーはまだ実感が湧かないらしい。
「ウソみたいだ! まだ信じらんねぇよ。まさか今日ここまで話が進むなんて思ってもいなかった!」
「実は僕も今日はジェフにOKもらえないだろうと思ってたんだ」
「お前、頑張ってくれたから……とうとう俺のこと、何も話さずに承諾させちまった……どうなるかってハラハラしたけど、全部お前のお蔭だ」
「頑張るのは僕の役目だからね。お前は『リチャード・ハワード』って間違えないで言えるように頑張ってくれよ」
「リチャード・ハワード……ウソみたいだ、フェル!!!!」
まず、大学に戻ろう そう二人で決めた。
ジェフに言われたことは尤もだ。世間は甘くない。綺麗事じゃ暮らしていけない。それに社会に出るまでの猶予期間が出来たことで、僕らはきちんとした生活設計が立てられる。何もかも見越したジェフのアドバイスのお陰で、僕たちには現実が見えてきた。
楽しいことを考える余裕も出来た。式に誰を呼ぶか。いつにするか。
今は夏休み。サマースクールの申し込みはもう無理だけど勉強もしなくちゃ。
7月25日に大学に戻って、7月中にリッキーのバイトを決める。そこからはお互いに働きながらこれから先のことを決めていく。
リッキーはこれまでの送金にあまり手をつけていなかった。行動が制限されていたから使いようがなかったんだ。だからここで援助を打ち切ってもある程度の生活費はある。
問題は僕だ。実は学費だけはこっそりグランパが出してくれていた。
『大学は出た方がいい』
それはジェフと同意見だったから助けてくれたんだ。けど生活費は自分で作らなきゃならなかった。
これを機会にリッキーも働きたいと言い出して、僕らは一緒にバイトすることにした。
本当にやること、考えることがたくさんある。
「式はいつがいいかな。フェル、誕生日はいつ?」
楽しそうなリッキーの声。
「悪い、もう過ぎた」
「……うそ……」
「ほんとだよ、4月だから。リッキーは?」
「4月のいつ?」
「8日。どうかした?」
「それって……俺たちが初めてセックスした後だよな…」
思い返してみる。
「そうだな、シェリーにばれた後だから」
みるみる目が潤んで僕は焦った。
「嫌いだ、フェルなんかフェルなんか大っ嫌いだ!」
何が起きたのかさっぱり分からない……飛び出して行ったきり、1時間も戻って来ない。あちこち探して、家に行ってみた。
「母さん、リッキー来なかった?」
「さっき見かけたけど。どうしたの?」
「それが……」
経過を聞いた母さんが笑い始めた。
「それはあなたが悪いわよ」
「どうして!」
「考えなさいな。私は教えない」
なんでこんなことになるんだよ。
「少し時間いい? リッキーなら心配ないから」
何をもってして大丈夫だと言えるのか?
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