18.お前のものになりたいから(第1部 END)

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  「立て、もう一度。僕の気はまだ済んじゃいない。立て、殺すぞ」 「ゆるしてください ゆるしてください」 「その言葉が認められるのは相手に許す気がある時だけだ。立て」 泣きながら膝を立てたところを殴り倒した。 「立て、僕に向き合え」  口の下が真っ赤な血に染まっていた。もう立てないことは見て分った。そばに行って、胸倉を掴んだ。引きずり上げて拳を下ろす。 「フェル、もういいだろう? な? フェル」  どさっ、と足元に捨てた。空を見上げて空気を吸った。遠くからサイレンが聞こえる。 「リッキー、シェリー。帰ってくれ。タイラー、二人を頼む」 「どうする気なの!?」 「自首する」 「フェル! お前は何も……」 「傷害罪だ、僕のやったことは。逃げるつもりなんかない。だから行くんだ」  みんなに背を向けた。後ろから抱きしめられた。 「俺、残る。お前を独りなんかにしねぇ。お互いの前から消えちゃいけない、そう俺に約束させたろ? 俺を締め出すな、俺はお前の大事な飾りもんじゃねぇ」 「私も残る。もうあんたを独りにしない。ちゃんとそばにいる」  泣くつもりなんかなかった。でも僕は頬を拭っていた。やっと解放されるんだ そう思った。  リッキー、今なら心の底から分かるよ。恐怖から解放される恐怖ってあるんだな、お前が盗聴器を踏み潰した時のように。狂ったようにコンセントを壊し続けたように。  僕はこの恐怖を抱きしめるよ。こいつも僕のものなんだ。でも、僕はこいつのものじゃない。 「リッキー。シェリー。ありがとう。そばにいてくれ」  パトカーには僕一人が乗せられた。二人はタイラーの車で後ろからついて来た。大人しく手錠をかけられたから、パトカーの中には張り詰めた空気は無かった。  僕も心が静かだった。むしろすっきりしていた。体に付着していたネバネバを洗い落としたような、そんな気持ちだった。  
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