14.忍び寄る影

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   結局僕はあのままリッキーに見惚れて、気がついたら30分も時間が経っていた。 『家族なんだからもっとフランクに』  今のリッキーには難しい宿題。そんなこともあったりして気疲れしてるんだろう。起きないリッキーをそのままに、そっと部屋から出てバスルームに向かった。  昨日よりも体の痛みが取れている。動くのもだいぶ楽になっていた。夕べゆっくり眠れたおかげだ。  バスルームを出たところでノックがあった。 「誰?」 「俺! 起きてた?」  バスタオル一枚腰に巻いてドアを開ける。 「今シャワー浴びてたんだ」  そして、ビリーから朝食の知らせを申し訳無さそうに俯いた顔で言われる羽目になった。 「あの……邪魔するつもりじゃなかったんだ……」  ドアを開けたちょうどその時、ほとんど裸体で降りてくるリッキーを見て泡食ってしまったんだ。  リッキーもビリーの姿を見て一目散に2階に駆け上がってしまった。 「良かったら朝食に来て! 来なかったら俺、適当に言い訳しとくから!」  ご丁寧に2階に叫んでビリーは戻っていった。    「バカ!! もっと早く起こしてくれれば良かったんだ!」 「見られちゃったもんはしょうがないだろ?」 「夕べはヤッてねぇ!」 「そういう問題?」 「ビリーにどんな顔すりゃいいんだよ!」 「堂々としてりゃいいじゃないか。それともヤッてないって言うか?」 「俺……フェルのそういうとこ、たまについてけない」 「気にするなよ、僕たち夫婦になるんだからな」  途端に赤くなったリッキーがおかしかった。 「いいから食事に行こう。食いっぱぐれちゃうし、ビリーの変な言い訳の方が心配じゃないのか?」  その言葉は効いたらしい、慌てて寝室にあるシャツを羽織りながらリッキーは下りてきた。 「シャワー浴びるくらいの時間はあるよ」 「お前は?」 「もう済んでる」 「……きったねぇ!」  バスルームに飛び込んで濡れ髪のまま家に向かった。 「あの……間に合って良かったね」  濡れた髪に目をやったビリーの要らない気遣いにリッキーは赤くなるから、まるで認めちゃったようなもんなのに本人は気づいちゃいない。  ジェフも母さんも素知らぬ顔してんだか気づいてないんだか分からなかったけど、僕の口元はどうもニヤついてくる。お蔭でテーブルの下でリッキーに蹴られてしまった。 「いつ、ここを発つの?」 「明後日くらいかな、ゆっくり考えたいことも、やんなきゃならないこともあるからね」 「どんなこと?」 「俺のバイト先を決めるんです。自分の生活を変えようと思って。少しでも自力でやっていこうと頑張るつもりです」 「あのね、リッキー。グランマから釘を刺されてるの。普通に喋らないと式は見送りって」 「え……?」  
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