18.お前のものになりたいから(第1部 END)

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   正面に警官が座った。 「さて、名前は?」 「フェリックス・ハワードです」 「年齢は?」 「20歳」 「未成年じゃないことを認めるね?」 「はい」 「住所と電話番号。仕事先、または学校。全部答えてくれるね?」  僕は一つ一つ、きちんと答えた。 「通報した人は君が一方的に暴力を振るったと言っている。認めるか?」 「いいえ」 「何もしてないと?」 「いえ、しました」 「何をした?」 「蹴って殴りました」 「彼はあのまま病院に運ばれたよ。かなりのケガを負った。それでも一方的じゃないと?」 「はい。一方的じゃありません。精神的苦痛を与えられました」  警官はペンを置いた。手を組んでまじまじと僕の顔を見た。 「君は……まじめそうだ。嘘をつくタイプには見えない。いったい何があった?」 「僕はあいつに、セバスチャンに襲われました。体をいいようにされました。だからケリをつけたんです」 「待っていてくれ」  しばらく僕を見ていた彼は、廊下に出て行った。  ほとんど身動きしなかった。苦痛が、僕の奥に蠢いていた。でもそれは幻。ファントムペインだ。正体を知っている。僕に『忘れるな』と事実を突きつけてくる痛み。  けれど戦う必要なんて、もう無い。後は受け入れるだけ。この痛みも僕のものだ、でも僕はこの痛みのものじゃない。 「待たせたね」  さっきの警官がまた座った。時計を見ると3時間が経っていた。 「君は告訴するか?」 「告訴?」 「そうだ、君が受けた傷害に対して告訴するか?」 (僕が告訴? セバスチャンは? 告訴されるのは僕じゃないのか?)  まるで心の声が聞こえたかのように返事があった。 「あっちは告訴しないそうだよ。彼はメンタル ホスピタルの患者だった」  メンタルホスピタル……精神病院にいたのか…… あの老紳士の姿が浮かぶ。  
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