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花を買おうか……迷って、やめた。クセになるし。第一僕はそんなタイプじゃない。せいぜい謝るのとキスくらいしか出来ない。
言われた場所に行ってみると、そこにはいなかった。キョロキョロしてるとレイの声がした。
「こっち!」
そばの木立の中だ。
「丸見えだからさ、ここに連れて来たんだ。じゃ、後はよろしくやってくれ。もうリッキーが走ってても俺は掴まえないからな」
僕を置き去りにして、レイは行ってしまった……
取り残された僕は、まるで悪いことをした子どものようにリッキーのそばに座って「ごめん」と言った。膝を抱えたまま、僕に背を向けるようにくるりと回った。膝の間に埋めた頭が震えてるみたいだ。
「ごめん、まだ泣いてる? 僕が悪かったよ。リッキーの言う通りにするよ」
「ほんとに?」
良かった、返事してくれた。
「ああ、ほんとだよ。そうだよな、早くって僕も言ったしね。ごめん、秋休みにしよう。その代り大忙しになるよ? 招待状やら着る服やら……」
こっちを振り向いた顔には涙が光ってたけど笑顔が浮かんでいた。
「俺、早く式挙げたかったんだ…講義があるから旅行は先の話になりそうだけど、式はもう待てない……」
「旅行? それは当分無理だよ! バイトして資金貯めないと……」
笑顔から大粒の涙が落ち始めた。
「リッキー……泣くなよ……今のは我が儘だって分かってるだろう? お前だってつい昨日、節約しなきゃ!って言ってたじゃないか!」
「分かってるよ……でも、今そんな風に言わなくってもいいじゃねぇか……」
心の中で(バカ)と言いつつもしっかり抱いて唇を重ねた。結局僕はリッキーの涙には勝てないんだ……
バカだから、可愛い。僕の脳みそも、相当バカなんだろうと思うよ。
「秋休み? すぐじゃない! あんたら、ほんっとにバカね! 招待状のリストは? じゃそれはロジャーとチキンに頼んで、二人で式服を見に行ってらっしゃい! まったく! 場所は決めてあるのね? ジーナたちには知らせたの? そう! そっちは大丈夫ね。 ……ね、肝心のお金は? OK、その代りその後は必死に働くのよ。あ、マリッジライセンス、取ったの?」
シェリーの弾丸のような取り調べの上、許可を得て話はとんとん拍子に進みそうだ。
資金は二人でよく話し合って、今ある生活費と婚約式でのカンパのお金をそっくり当てることにした。そして生活費にはリッキーの元に残っている貯蓄を。
そのまま貯蓄を結婚資金にしても意味は同じかもしれないけど、気持ちの上でリッキーの辛い思いの代償を当てるのには二人とも抵抗があった。
だからその穴を埋めるためにバイトを続けていく。持ってるお金に甘えてるときっとあっという間に消えてしまう。
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