14.忍び寄る影

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   思わずジェフを見るリッキーにジェフは笑っている。 「私に助けを求めないでくれ、リッキー。ここじゃ実権を握ってるのは母だと思った方がいい。私はよく家を留守にするからね」  これはリッキーにはハードルが高いだろう。 「あの、ジーナ……いきなりは無理かと……」 「そう? 私は構わないわよ。だってビリーには普通に喋ってるでしょ? 後は私とジェフにだけよ」  完璧に母さんはリッキーで遊んでる。 「……頑張ります……」 「え? なんて言ったの?」 「が、がんばるよ」  しばらくはこの片言が続くだろう。大学に戻るまで大変そうだな、リッキー。  母さんが力を注いだ贅沢な朝食を味わって、僕らは離れに向かった。あの後、リッキーはすごく口数が少なくって、いつもの倍くらい緊張してフォークを取り落としたくらいだ。     「早く大学に戻ろう」 「焦るなよ、僕はまだそんなに早く動けない」  リッキーが急に不安そうな顔に変わった。 「まだ……そうだよな、まだ痛むよな……ごめん、平気な顔してるからすっかりそのことが頭から飛んでた」 「謝ることじゃないよ。無視出来ない痛みじゃなくなってきたから。でももうちょっとだけ待ってくれるか?」 「もちろんだよ! お前が最優先なんだ、してほしいことあったらなんでも言えよ」 「リッキーは充分僕の面倒見てくれてるよ。後は自分で立ち直んなきゃ」 「俺、一緒に戦うって言っただろ? 自分だけ一人で頑張んなよ」 「お前がいてくれるだけで僕は頑張れるんだ。  僕がだめな時は助けてくれよ。きっとお前しか僕を助けられない」 「任せとけ、お前には俺がいる」  そうだ。それが僕の支えなんだ。  それから3日経って、僕らは大学に戻ることに決めた。 「買い物に付き合ってくれよ」 「買い物?」 「街まで乗っけて欲しいんだ」 「でも明日には大学に戻るぞ? なんの買い物だよ」 「内緒」  不承不承にリッキーは運転手になってくれた。最近はしょっちゅう運転してるから僕も安心して乗っていられる。リッキーもこの頃じゃドライブを楽しんでいる。 「どこ? 行きたいのは」  目的地を言いたくなかったから方向だけを言った。 「右」 「次、左」 「真っ直ぐ」 「そこ右」 「なあ、いったいどこ行くんだよ」 「内緒」  イライラしてるのが伝わってくるから余計楽しくてしょうがない。 「そこで止まって」  車から降りて不審な顔をしているリッキー。 「何があるんだ? 宝石店しかないじゃねぇか」 「おいでよ、リッキー」  その小さな宝石店に僕は彼を連れて入った。  
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