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思わずジェフを見るリッキーにジェフは笑っている。
「私に助けを求めないでくれ、リッキー。ここじゃ実権を握ってるのは母だと思った方がいい。私はよく家を留守にするからね」
これはリッキーにはハードルが高いだろう。
「あの、ジーナ……いきなりは無理かと……」
「そう? 私は構わないわよ。だってビリーには普通に喋ってるでしょ?
後は私とジェフにだけよ」
完璧に母さんはリッキーで遊んでる。
「……頑張ります……」
「え? なんて言ったの?」
「が、がんばるよ」
しばらくはこの片言が続くだろう。大学に戻るまで大変そうだな、リッキー。
母さんが力を注いだ贅沢な朝食を味わって、僕らは離れに向かった。あの後、リッキーはすごく口数が少なくって、いつもの倍くらい緊張してフォークを取り落としたくらいだ。
「早く大学に戻ろう」
「焦るなよ、僕はまだそんなに早く動けない」
リッキーが急に不安そうな顔に変わった。
「まだ……そうだよな、まだ痛むよな……ごめん、平気な顔してるからすっかりそのことが頭から飛んでた」
「謝ることじゃないよ。無視出来ない痛みじゃなくなってきたから。でももうちょっとだけ待ってくれるか?」
「もちろんだよ! お前が最優先なんだ、してほしいことあったらなんでも言えよ」
「リッキーは充分僕の面倒見てくれてるよ。後は自分で立ち直んなきゃ」
「俺、一緒に戦うって言っただろ? 自分だけ一人で頑張んなよ」
「お前がいてくれるだけで僕は頑張れるんだ。
僕がだめな時は助けてくれよ。きっとお前しか僕を助けられない」
「任せとけ、お前には俺がいる」
そうだ。それが僕の支えなんだ。
それから3日経って、僕らは大学に戻ることに決めた。
「買い物に付き合ってくれよ」
「買い物?」
「街まで乗っけて欲しいんだ」
「でも明日には大学に戻るぞ? なんの買い物だよ」
「内緒」
不承不承にリッキーは運転手になってくれた。最近はしょっちゅう運転してるから僕も安心して乗っていられる。リッキーもこの頃じゃドライブを楽しんでいる。
「どこ? 行きたいのは」
目的地を言いたくなかったから方向だけを言った。
「右」 「次、左」 「真っ直ぐ」 「そこ右」
「なあ、いったいどこ行くんだよ」
「内緒」
イライラしてるのが伝わってくるから余計楽しくてしょうがない。
「そこで止まって」
車から降りて不審な顔をしているリッキー。
「何があるんだ? 宝石店しかないじゃねぇか」
「おいでよ、リッキー」
その小さな宝石店に僕は彼を連れて入った。
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