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君からの返事はすぐに返ってきた。私が原稿用紙を七枚ほど書いたのに対して、君からは原稿用紙一枚。しかも空欄だらけの一枚が送られてきたときは落ち込んだ。しばらくは読むことを放棄していたが、私から急かしておいて読まないのは如何なものかと暇ができたときに久しぶりに開いて読んだ。
「君は二つほど間違っている。まず一つ目に彼女はその日一人ではなかったと思う。きっと隣に誰か連れがいたのだろう。君ではない、誰かだ。その人が誰かは私にもわからないし、また追及する理由もない。
二つ目は私が君に話したという言葉だ。確かに私は君にそんなことを言ったが、私が記憶している限りでは続きがあった。
『犬よりも猫のような女を傍に置くと良い。だが、用心を怠るな』
君は彼女の泣いた理由を知りたがっていると書いていたね。私の見解としては『犬にも猫にもなれなかった人だから』だ。正月君に会えることを楽しみにしている」
私は手紙を閉じてその場に寝そべった。きっと君は一つの答えを導いているようだが、私には謎が深まるばかりの手紙だった。
これは私が阿呆だからか、それとも異性との経験が足りないからなのだろうか。
頭の中が天井の木目の様にこんがらがっていく。
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