フォーレ シチリアーノ

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フォーレ シチリアーノ

前ページで 狼歩くん に フォーレの『シチリアーノ』リクエストいただきましたのに・・・ 僕は大好きな狼歩くんのために何か特別なことを書きたいと思うあまり なかなか更新できず 時間ばかりが過ぎてしまいました。 その間 フォーレの人生や作品を調べたり シチリアーノについて調べたり フォーレの『シチリアーノ』を演奏している様々な楽器による動画を何十種類も聞きあさり 聞き惚れ・・・ だんだん目的を見失い ただ曲想の坂道を上ったり下ったりして ぼんやりと曲の底に流れる時間のさざ波に揺られ続けていました。 僕の中で『シチアーノ』と『パヴァーヌ』は同じ景色です。 公には教育者としてのフォーレの心の奥にある秘密の扉を開けた景色。 1913年 68歳のフォーレ自身が演奏する『パヴァーヌ』がYouTubeにアップされています。 曇り空の下で湿度の高い哀愁を執拗に畳みかけるような 少しもつれた指の動きが 茶渋のように下顎に残る。 フォーレの言葉 1906年(妻へ宛てた手紙の一節) 「存在しないものへの願望は、おそらく音楽の領域に属するものなのだろう」 1908年(次男へ向けて) 「私にとって芸術、とりわけ音楽とは、可能な限り人間を今ある現実から引き上げてくれるものなのだ」 これらの言葉を繰り返し読みながら『シチアーノ』『パヴァーヌ』を聴くだけで僕は我が身を振り返り背筋がゾクゾクしてしまうのです。 ほんの短いフレーズだけで 時を超え 多くの人々の心の襞をくすぐるフォーレの音楽の魅力・・・ 流麗なメロディーが描き出す哀愁のに射し込むが たまらないのです。 狼歩くんが この曲を聞くと泣きたくなるのは この(ひずみ)のせいでしょう。 モーツアルトの時代にはなかったグローバルな価値観の歪がフォーレの鋭敏な触覚で浮き彫りにされたような印象が残ります。 モーツアルトが大好きな音楽的平衡感覚に優れた狼歩くんの神経にとって フォーレの描く透明水彩的な湿り気は 深く沁み込み過ぎるのでしょう。 僕自身は 常に ずぶ濡れになってロマン派の沼に沈んでいるので 意外に泣きたくはならないのです。 言い換えると あまりにも美し過ぎて 泣けないのかもしれない。 狼歩くんにフォーレをリクエストしていただき いろいろ考え彷徨った結果 たどり着いたのは フォーレが言った通り 『音楽は(僕らを)今ある現実から引き上げてくれるものなのだ』 という思い。 いっしょに この曲に耳を澄まし 心の襞を揺らしていると思うと まるで心身を密着させて神経を同じ色に染め上げていくような深い安堵と心地よい興奮に酔い痴れてしまう。 嬉しいです。 バーチャル・デート ♡♡ YouTubeでは 皆さま それぞれ お好きな楽器で演奏を聴いていただければよいかと思いますので あえて指定はしません。
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