軸足

1/2
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

軸足

 時代が移り変わってゆくなかで、当たり前だったことが当たり前じゃなくなることって人生の中では多々あるように感じる。  私は先ほど、SNSにこう綴って投稿した。 〔離婚しました。今後は軸足の位置を変え、より良い未来を強い心で掴みにいきたいと思います。〕    投稿後まもなくきたフォロワーからの反応や見知らぬ人からのおめでとうございますを皮切りに、日本沈没間際の路面コンクリートの如くスピード感で、その投稿は瞬く間に広がっていった。  数少ないフォロワーに向けて呟いた、自分が離婚をしたという他人にとっては極めて些細な出来事が、まさかここまで大事になり、祝福されることになるとは思ってもみなかった。同時に多くの人のほんの数秒されど数秒を奪ってしまったことを、一瞬だが申し訳なく思った。  秒刻みで増えてゆく反応をリアルタイムで見つめながら、ふと思う。  これが例えば百年前だったならば、どうだっただろうか。百年前といえば、ちょうど第一次世界大戦が終息し、戦後の煽りをうけ、日本が大不況に陥っていた頃だろう。当時の人々に離婚という概念は既にある。だが、離婚をした女性に他人が極めて軽く「おめでとう」という文化はなかったはずだ。  私は決して「おめでとう」に不快感を覚えているわけではない。むしろ、こんなにも祝福されて更にはフォロワーまで増えるのであれば、もっと早くに離婚をすれば良かったとすら思っている。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!