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ある日の事でした。
楽しそうに遠くツバメが飛んでいく夕暮れ。
しかし雨太郎には修行する以外、あてはありません。
例え寝にくくても生まれた場所の草の家にまた住むために。
来月の相撲大会こそ、なりにもふりにも構わずに、なんとしてもトノ政を倒さなくては。
野生の世界は強さが全て。
男の勝負は言い訳無用。
そして、避けられない戦いが男にはあるのです。
そんな雨太郎ですが、突然ざぶんと素早く川へと飛び込みました。身の危険を感じたのです。
珍しい事ではありません。
スズメの子が馬がそこのけそこのけと通ればピイピイと逃げて行く様に、小さなかえる達は自分より大きな動物が現れれば、命を守るために避難しなければなりません。
現れたのは髪の毛が白く染まった、小太りの優しそうなお爺さんでした。
しかし通りすがりの人間も、かえる達からすれば恐ろしい大怪獣に違いありません。
川面に突き出した石に掴まり様子を見ていると、どうした事か人間もこちらを見ています。
『────……』
そしてどうやらこちらに何か話し掛けている様ですが、かえるの雨太郎に人の言葉は分かりません。
でも敵意はなさそうだと判断して川から上がり、修行を続ける事にしましたが、やはり人間は雨太郎を興味深そうに観察していました。
なんなんだ?変わった人間もいるんだなあ……
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