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雨太郎はそれから度々、その人間を見かける様になりました。
人間は、ある時は蟻を眺めていました。
黒い道みたいに延々と続く行列を追いかける視線は、やがて空に浮かぶ雲の峰へ辿り着いたらしく、そっと彼は笑いました。
蟻の列が雲まで繫がってるって?
そんなはずないじゃん!
蟻はね、雲になんかいないんだよ。
地面にある巣から出て来るんだよ。
……でもなるほど、そういう見方も面白いなあ。
またある時はしゃがみ込んで、スズメの子達が遊んでいるのを眺めていました。
しかしスズメも彼に気付くと一斉に飛んで行ってしまいます。そして寂しそうに立ちあがるのでした。
そりゃそうだよ!
一緒に遊びたかったのかなあ。
でも人間は大きいから飛べないのに。
そして彼は練習に励む雨太郎を見ると。
「──……!」
必ず何かを語りかけるのでした。
……いつも一人で草花を見たり、空を見たりして。
あんなに大きな人間も嫌な事とかあるのかなあ。
辛かったり、寂しかったりするのかなあ。
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