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「なん……だとっ!?」
トノ政にとって、相手を見上げるのは初めての経験でした。
大きいなんてもんじゃない。姿形はかえるだけれど、まさに大男の様な小山!
噂に聞いたうしがえるとはこいつの事か!?
「お、面白え!勝負だ!!」
トノ政渾身のぶちかまし、しかしウシオはびくともしません。
そしてトノ政の体ほどもある巨大な腕が、ぶうんとうなりをあげてトノ政に迫ります……!
「な、何だあいつは!?本当にかえるか!?」
大会当日。
小川にどしん、どしんと現れたウシオをみて、誰もが驚きます。そりゃあそうでしょう。
「トノ政はどうした!?」
雨太郎が尋ねると、
「あいつなら病院送りにしてやったさ、ぐわっぐわっぐわっ」
うしおが鳴くだけで川に波紋が広がります。
「さあ、対戦相手の雨太郎ってのはお前だな?いざ尋常に勝負だ!
ハエみたいに手をすり足をすり、わびを入れれば許してやろう」
「なにをっ!」
それを聞いたカジカは震え上がって雨太郎に言います。
「雨ちゃんやめて!こんなの尋常じゃないよ!無差別級にも程があるわ!」
行司を勤めるイボ爺様も言います。
「いやこれは流石にちょっと……
今回は中止じゃ中止!」
でも、中止にすればウシオは力ずくでこの小川を奪う事でしょう。
野生の世界は強さが全て。
男の勝負は言い訳無用。
そして、避けられない戦いが男にはあるのです。
「よし!ウシオ、勝負だっ!!」
そこへ、杖をつきながらやって来た者が。
……お爺さん……!
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