episode 01. 導かれた運命の起動

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episode 01. 導かれた運命の起動

「出ていけ! 二度と帰ってくるな!」 「こっちから出てくわよクソジジイ!」  その日、久世美咲(くぜみさ)は家を追い出された。  事の発端は美咲の長期インターンシップが決まったことだ。それ自体は両親も祖父も喜んでくれたが問題はインターン先企業にあった。  インターン先は美咲の通う《美作中央大学》の経営元である《株式会社美作ホールディングス》の本社で、アンドロイド開発業界で世界最先端の一角を担う企業だ。  一流企業ということもあり、四十三歳になっても少女のような母・久世香織はきゃあきゃあとはしゃいで喜んでくれた。  だがアンドロイドに嫌悪感を示す父・久世裕太もろくに口を聞いてくれなくなりおはようの挨拶すら返ってこない。  それだけならまだ良い。祖父・久世大河はその上をいく。大河は大のアンドロイド嫌いだった。憎んでいると言っても過言ではなく、アンドロイドが街中を歩いている事が許せないらしく外出すらろくにしない。  そんな状態だから美咲が美作中央に入った時も大喧嘩になった。祖父とも父とも、かれこれ丸一年はまともな会話をしていない。  そこにきてアンドロイド開発企業でインターンするなんて言語道断だ。進路を変えない限り敷居はまたがせないと怒鳴られ放り出されてしまった。家が父か母の持ち家ならともかく、祖父が建てた祖父の家のため手も足も出ない。 「憧れの美作本社に入社できるかもしれないのに辞めてたまるか。クソジジイのために生きてるわけじゃないのよ。とりあえず誰かんとこ泊めてもらお。財布とスマホとノートパソコンだけあれば大丈夫だし」  幸いにも鞄の中に最低限の物は入っている。やってやろうと怒りが収まらないまま立ち上がると、窓の内側から母が慌てて手を振っているのが見えた。手に大きな鞄を持っている。生活に必要な物を何かしら揃えてくれたのだろうか。  美咲はとりあえず久世家の敷地を出た。数分すると、走ってるのか歩いてるのか分からない速度で母がやって来る。 「や~ん。美咲ちゃんついにっていうかんじね~」 「ついにも何も急すぎるでしょ。何なのよクソジジイ」 「え~? だって約束破ったの美咲ちゃんじゃな~い。お父さんの会社にインターンして就職するって言ってたのに~」 「へ? 何それ。そんな話した覚えないよ」 「大学受験の時にしたわよ~。だから美作に入るのも許してくれたんじゃない~」
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