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実家を追い出されて翌日。美咲は昼休みに入った大学のカフェエリアで友達の遠野麻衣子とランチをしていた。
追い出されて最初に助けを求めようと思ったのが麻衣子だった。追い出された経緯を話せば同情して味方になってくれると思ったのだが――
「あはははははははは!」
「笑いごとじゃないわよ!」
「これで笑わなきゃいつ笑うっての! ひ~! 馬鹿すぎ~!」
「声大きいわよ! 大体私の進路なのに何でクソジジイに文句言われなきゃいけないのよ」
「な~にが進路だっての! あんたの目当ては進路じゃなくて漆原朔也でしょーが!」
ぎくりと美咲は眼を泳がせた。
実は美咲が美作に憧れインターンを希望した理由はアンドロイドが好きだからでも企業理念に共感したわけでも、ましてやアンドロイドエンジニアになりたいからでもない。
麻衣子は持っていたファッション雑誌をぱたんと閉じて表紙を見ると、表紙には妖艶な笑みで艶めかしいポーズをした青年のモデルが映っている。
そして麻衣子は目を細めてゆっくりと口角を持ち上げ美咲に表紙を突き付けた。
「次世代を牽引する若き天才・漆原朔也! 世界のトップクラスエンジニアにして芸能人顔負けのルックス! この方の所属企業は!」
「……美作本社」
――漆原朔也
美作第三アンドロイド大学に首席入学首席卒業。二年前に大学院博士課程を修了し二十七歳で美作へ入社したが、インターン中に世界初となるアンドロイドファッション事業を立ち上げ代表取締役となると大当たりした。
機能ばかりを追求してきたアンドロイドのエンターテインメント性に光を当てた初めての事業で、メディアで活躍するエンターテインメントアンドロイドから絶大な支持を得た。
世界中からオーダーメイドの要望もあり、現在美作グループのアンドロイド関連事業子会社全二十二社のうち売上第一位となっている。
現状は新卒二年目だが既に三部署のマネージャーとなり、数年もすれば確実に役員入りするだろうと言われている。
まさに伝説級で、アンドロイドに疎い一般人ですら名前は知っているほどだ。
「凄い人の下で働いてみたいじゃん」
「は? 凄いのは顔でしょ? 男目当てでインターンやったら勘当とか笑い話でしょ」
「違うわよ! お祖父ちゃんはアンドロイドが嫌いなの!」
「男目当てなんて倍嫌われるだろ」
「くっ……」
麻衣子は盛大にため息を吐き、スマホを取り出し漆原朔也の記事を検索した。
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