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郵便
市立霊園に当選した私は、申請の為に借りている賃貸の部屋で郵便物が来るのを待っていた。
当選結果の葉書と、必要手続きをする為の茶封筒。
それが来ない事には、何も進まない。
配送されるまで1週間程度かかると、市のホームページに記載があった。
当選から5日後。
待ち焦がれていた郵便物が来ていた。
早速、中身を確認し、しっかりと目を通していく。
記載されている内容として、大きく3つ。
1つは、市が管理する霊園である為、使用料が発生するとの事。
それは仕方ない事だろう。
霊園によって違うみたいだが、私が当選した霊園では永代使用料のみが必要だった。
それ以外の費用は一切必要ないらしいが、その永代使用料が30万円。
分割支払いは不可。一括での振込用紙支払いとなる。
使用料に関しては、以前に上司に少し話を聞いていた事もあり、ある程度想定内の金額だった。
そして、もう1つは有効期限。
永代使用料を支払うと、役所で区画使用許可書を発行される。
その許可書は有効期限が3年間。
つまり3年以内にお墓を建立し、納骨しなければならない。
3年を経過し、お墓の建立や納骨がない場合は、使用権が消失するとの事。
最後に、当選の葉書が到着してから10日間。
つまり抽選結果が出てからおよそ2週間。
その期間中に永代使用料の支払い手続きをしなかった場合、当選が無効となり補欠の当選者が繰り上がり当選になるという事。
それらが、細かく記載されていた。
あくまで市が管理、運営している霊園。
多少なりとも、規則や厳しい条件がある事は仕方ない。
が、当選してからおよそ2週間以内に30万円を用意して支払わなければならない。
それも分割は認めずに一括支払いのみ。
通夜や葬儀、初七日や四十九日、初盆や彼岸。
ありとあらゆる事で必要な経費はかかるもの。
やっと落ち着き、納骨したいと思ったら決して安くない費用。
しっかりと収入に余裕のある人や、たっぷりと蓄えがある人なら構わないだろう。
しかし、生活困窮者はどうすればいいのか。
ずっと納骨をせず、お墓を建立する事すら許されない状況になるのではないか。
母子家庭や父子家庭、リストラや年金生活者。
決して裕福とは言えない生活を送っている人は、決して少数ではない。
そこを考慮し、せめて分割の支払いを認めてもいいのではないかと私は思う。
事実、私もすぐに手元にそんな金額があるわけではない。
そこで私は、ずっと子供の通帳に貯めてきた妻の遺族年金を少しだけ借りる事にした。
お墓を建立する為に使う事で、妻や子供は怒るだろうか。
遊びで使うお金ではない。これは許してくれると私は信じたい。
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