36人が本棚に入れています
本棚に追加
供物
私はほぼ毎週、花瓶の花を入れ替える為に仕事終わりにスーパーに行く。
併設されている、いつもの花屋さん。
そこで花を買い、帰って長さを揃えて遺影の横におけばそれで完了である。
が、私はいつもそこで、つい寄り道をしてしまう。
入り口のすぐ左側に花屋さんがあるのだが、その隣がパン屋さんなのだ。
妻はパンが大好きだった。
白米よりもパン。
朝も夜もパン。
お腹が空いたり、何か口に入れるならパン。
そんな人だった。
ならば、そこで妻が大好きだったパンを買わない理由などあるだろうか。
答えはノーだ。
私の朝食や昼食にもなる。
総菜パンが中心にはなるが、たまにバラエティボックスなるものがある。
ミニクロワッサンやミニあんぱんなどが詰まったもの。
それを買うのもいい。
そのままお菓子の所へ行き、これまた妻の大好きだったポップコーンを探す。
さらに、おつまみの豆も好きだったので、それも買う。
たまにはデザートも良いだろうと、デザートも見て回る。
総菜コーナーに、ごく稀に玉ねぎの天ぷらが残っている事があるので、それも欠かさずにチェックする。
妻は玉ねぎが大好きだった。
私が1度、本当に気まぐれで作った、玉ねぎの丸っと煮。
それを食べてからというもの
『私、自分が玉ねぎ好きだったなんて知らなかった』
と、玉ねぎの虜になってしまった。
そんな妻だ。玉ねぎの天ぷらがあれば喜ぶと思うのだが、これがなかなか残っていない。
そうして、あちこち妻の大好きだったものを買い、最後にお茶を数本買う。
妻の飲み物はお茶。
緑茶、ウーロン茶、無糖の紅茶、ジャスミン茶、麦茶。
お茶はなんでも好んでいたが、緑茶や麦茶は家でも飲めるので、ここではジャスミン茶や無糖の紅茶、ウーロン茶を買う事が多い。
この時間が、私はたまらなく嬉しいのだ。
妻の事を考え、妻の喜ぶ顔を想像しながら買い物をする時間。
数少ない、私が妻の為に出来る事。
花を買う時も同じだ。
季節を感じられるものや、色鮮やかなもの、彩りも考えながら選ぶ瞬間。
帰って1週間無事に過ごせた事、お供え物を買ってきた事を報告し、綺麗にお供え物を並べていく。
なるべくなら
『またこれ~?』
と思われないものを選びたいものだが、それが実践出来ているかは定かではない。
最初のコメントを投稿しよう!