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侘寂
侘寂。
日本古来からある言葉。茶道や日本庭園によく用いられる言葉であり概念でもある。
お墓を建立する人は高齢な方が多い。
自然と、この侘寂を意識する人も多いらしい。
必然、霊園には国産のグレーのお墓が多いのだと仏具店の人は言っていた。
国産の石は吸水性が非常に高い。
水を吸った石はどうなるのか。変色していくのだ。
もちろんすぐではない。
長年の雨水やチリやホコリ。
そういったものを吸い続けて、少しずつ少しずつ変色していく。
そしてそれは、全体が変わっていくわけではない。
雨水は頭上から降ってくる。そして下へ下へと伝わり、地面に流れていく。
つまり、お墓の〇〇家と書いてあるあの部分や、足元。
そのあたりが変色しやすいのだ。
日光もほどよくあたり、変色をより一層促すだろう。
そして、国産の石は吸水性とともに石が欠ける事もあるという。
お墓の角の部分。ここがいつの間にか丸みを帯びていたり、数ミリ単位での欠けがあったりする。
これは石の経年劣化で起こる現象であり、ある意味で必然な事。
日本人は、こうした長年の経年劣化による変色や欠けを侘寂といって気にいる人が多いという。
所謂、味が出てきたというやつである。
ジッポライターやジーパン、財布などの小物でも使い古して味が出てきた方がいいという人も少なくない。
それが侘寂の精神であり、日本人特有の感性なのである。
一方で、インド産やインドネシア産、中国産の一部では吸水性が低い石もある。
そういう石では水を弾く為、お墓に水滴が残り、水染みが出来やすいという。
しかし、変色する事はなく石も非常に硬い事が特徴の為、角が欠けるような事は一切ないという。
では、実際に見本の石を見比べてみる。
国産、中国産、インド産。それぞれ同じようなグレーの石があった。
なるほど。手に取ってじっくり見てみるが、全く違いが分からない。
産地を当てるクイズ番組なら、私は間違いなく自信満々に全問不正解をするだろう。
それくらい区別がつかないのだ。
石の性質や侘寂を意識して、この石にしようと決めるなら良いだろう。
しかし、国産だから問題ない、国産は安心、などという根拠のない固定観念はもう必要ない時代なのだ。
しっかりと、自分の好みの石を見つけて、しっかりと店員さんに聞き、そして選んでいくべきである。
少なくとも、私は今回改めてそう思った。
だって私は石の事を全く知らずに、国産だからという理由で決めたくなかったから。
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