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融資
諸々のデザインを決め、書類にサインをしたり見積を決定したりと、一通りの事が終わったのが10月中旬だった。
しかし、大きな問題点が1つだけ残っている。
支払いである。
私は初めてお墓というものを購入し建立する。
従って、それの支払い方法も分からなければ、どれほどの金額が必要かも分からないでいた。
おおよそ、高額にはなる事くらいは、なんとなく知っている。
だが、それはあくまで予想。皮算用。
いや、その皮算用すらも当てにはならない。
なにせ初めての事なのだから。
詳しい見積を聞いた結果として、私は
「まぁこれくらはするか」
と、思った。
総支払額、200万円。
これが高いのか安いのか分からない。
が、紹介という事もあって多少の値引きはされていた。
それは良かった。
そして問題はその金額をどう支払うか。
私の手元には200万円なんてもの金額はない。
クレジットカードも、金使いの荒い私が持っているはずがない。
つまり、月々の分割支払いかローン融資などがなければ終わり。
破断である。
両親に借りる事も可能かもしれないが、200万円もの金額をそう易々と貸してくれとは言いにくい。
いや、そもそも私の両親もそんな大金を持っていない可能性がある。
そうなったら万事休す。詰み。手詰まりなのだ。
私は支払い方法について尋ねてみた。
『あの、この200万円って一括でしか払えないんですか?』
その問いに、店員は
『そうですね。具体的には2パターンあります。一括でお支払いして頂いてから制作に取り掛かるパターンと、前金で3分の1程度、今回なら70万円くらいを先にお支払い頂いて、お墓のお引き渡し後に残りを支払って頂くパターンがあります。』
との事だった。
ローンや分割の事は何一つないこの説明。
私は半分以上、頭に入っていなかった。
どうやら私の脳は聞きたくない事を自然と遮断するようになっているらしい。
しかし、これでは困ったものである。
後は支払い方法が決まれば終わりという最終段階。
ここにきて破断になるとは、やはり私にはまだお墓は早かったのだろうか。
いや、そうなると低所得者はどうなる。
お墓など建立せずに家でずっと安置しておけという事だろうか。
お金がある人、クレジットカードを所有している人、貯蓄がたんまりとある人、そんな状態でないとお墓の建立は出来ないというのか。
それは、あんまりではないか。
そう思い、私は
『あの、正直この金額の貯蓄もないし一括とかも難しいんですけど…。ローンみたいなのってないんですか?』
と、聞いてみた。
お金がない事を自ら告白する事、これは非常に言いにくい事なのだ。
ローンという選択肢が元々あり、それを選択する事とは訳が違う。
「私、お金ありません。ローンありますか?なければ無理です」
と、遠回しに言っている事。
ある意味、屈辱的な事であり、ある意味では仕方のない事。
だが、これを自ら口にしなければならない事が、どれほど辛いか。
そんな私の気持ちなど露知らず、店員は
『あっ、ローンありますよ。お墓専用のローンがございます』
と、あっけらかんと言う。
ローンがあるなら3パターンじゃないか。なぜ最初にそれを提示しない。
私は湧き出てくる苛立ちを、ぐっと抑えてローンの詳細を教えてもらう事にした。
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