礼服

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礼服

私はこの年になって、初めて礼服というものを新調する。 それまでは、父親と背丈があまり変わらない事もあり、父親のお古をもらっていた。 そもそも、礼服を着る機会は数回しかなく、わざわざ新調する必要がなかった。 が、今回ばかりはそうもいかない。 私も40歳が目前になってきている。 そして自分の妻の納骨式で着るとなると、やはり新調した礼服を着たい。 これから先、何度も妻の節目で礼服を着る事にもなる。 ましてや、会社の後輩の結婚式なんかもあるだろう。 この機会に新調しない手はない。 私は少し緊張していた。 なにせ初めての事だ。選ぶ基準も分からない。価格の相場も分からない。 小さい頃から人見知りな部分がある私は、いきなり店員に話掛けるのは少し抵抗がある。 が、それでは埒があかない。 一通りハンガーに掛けられている礼服を見ながら、近くにいた店員さんに声をかけてみた。 『すみません。礼服を買いたいんですけど、どれが良いのか分からなくて』 と、私は包み隠さずに言った。 お店に来たのだ。恥ずかしがってどうする。 むしろ私が分からないとハッキリ言った方が、店員さんに色んな事を恥ずかい思いをせずに聞けるではないか。 だって、初めてで分からないんだから。 女性の店員さんは、親切に色々な礼服を見せてくれた。 生地の素材によって価格は異なる事は分かる。 だが、礼服や靴はランク分けというか、クラス分けされている事に私は驚いた。 そのクラスによっても価格は異なる。 一般的に礼服と言われるスタンダードなもの、ビジネスシーンでも使えるもの、参列者として恥じる事のないグレードのもの。 おおよそ8つ程度にクラス分けされており、一番低価格なものはビジネスシーンでも使える色の少し薄めのものだった。 私の予算や年齢を考慮し、一般的な礼服としてのスタンダードなものにする事とした。
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