病に伏す君に

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病に伏す君に

もういいよ。 もう頑張らなくても、大丈夫だよ。 君の柔らかい髪を撫でながら私は泣いた。 君は何も言わずに私の声を聞いていた。   数日後、君は息をひきとった。 君の髪は柔らかなままで、何度も撫でた。 座ったままの君は、まだ生きているようだった。   君の冷たい唇に、私の唇をそっとよせる。 首に、背に、足に。 全てが冷たくて、君がもうこの中に居ないことが分かって寂しかったけれど。 私は、泣かなかった。 だって、君は沢山頑張って生きたのだから。 ゆっくり休む時間がきたのだと思った。 だから、ゆっくりおやすみ。 君の小さな身体を木綿のハンカチに包み土にかえした。   本当は君とずっと一緒に居たかった。 ずっとずっと。 今も、家に帰れば君にただいまと言ってしまうよ。 もし、また君と会うことが出来たなら。 もういいよ、なんて言わない。 君はまだ頑張っていたのに。 私の言葉で、君の生きる望みを消してしまったから。 病に伏す君のそばに居て。 私の中に、深く降り積もった想い。   もういいよ、と言って欲しかったのは。 君の頑張る姿を見続けるのが怖かった私だった。 君は知っていたから何も言わず静かに目をとじた。   今になって頬を伝う涙が熱い。 終わり ・・・・・・・・・・ 最後まで読んでくださり、ありがとうございます! スタンプ、スター、ぽちぽちしていただけると、泣いて喜びます! どうぞよろしくお願いいたします!
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