第1話 男子校の花

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 では、話を冒頭に戻そう。    勇気を振り絞り、口を開いた少年。  だが、「好きです。」の一言は無く。  代わりに、    「監督無理です可愛すぎます!!こんなんっ!冷静に演技できるもんもできないっすわ!!」    という悲痛な叫びが響いた。    そもそもここ、尚早明和高等学校、通称そう高は男子校だ。  しかし、何故か学園祭でロミジュリやろうぜーということになり、じゃあヒロインどうするよ?いやそれはゆうりちゃん(男)だろ。  と、「かわいい」で有名な姫野ゆうりがヒロイン役に抜擢されたのだ。  一応ゆうり側も    「え、それやんなきゃだめ?やなんだけど。」    と断ったものの、いや、是非!先っちょ!先っちょだけでいいから!!とうるさいクラスメートに根負けし、渋々、本当に渋々「おーろみお。あなたはどうしてろみおなのー」となんの感情ももたないジュリエットを演っていた。  しかし、いかんせん可愛すぎた。  最初は、クラスの人気者がロミオをやることになり、    「まあ可愛いとはいえ男だろ?」    と余裕をぶちかましていたのだが、いざジュリエットならぬ姫野ゆうりを前にすると、  「アッ、かわいいッ」のだ。  たとえ、そのパッチリとした目が完全に死んでいたとしても、もう本当に可愛い。  なので、ロミオを演る者の条件がだんだん、「クラスの人気者」から「姫野ゆうりの可愛さに耐えられるもの」になるのは、とても自然な流れで。    先程ロミオをやっていた人物が、クラスの最後の一人であった。  「どうすんの監督、もう全員演ったよ?」    最初にロミオをやった例の人気者がたずねる。  ちなみに、その監督もロミオ役を経験済みだ。  監督は、    「これはもう、こうするっきゃねぇ!」  と突然叫びだし、姫野ゆうりにそっ、とサングラスをかけた。  おおおっ、とどよめくクラスメート達。  かくして、ここにグラサンをかけたジュリエットが誕生した。    その後、ロミオ役にクラスメート全員が立候補するという前代未聞の事件が起き、折衷案として、数分ごとにロミオを入れ替えることになった。  それを聞いた姫野ゆうりが、    「なんでだよッ!!」    とかぶっていたウィッグを投げ捨てたとかいないとか。    このことが学校全体に広がり、姫野悠里を取り巻くラブコメが展開されるとは知る由もない……。                
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