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では、話を冒頭に戻そう。
勇気を振り絞り、口を開いた少年。
だが、「好きです。」の一言は無く。
代わりに、
「監督無理です可愛すぎます!!こんなんっ!冷静に演技できるもんもできないっすわ!!」
という悲痛な叫びが響いた。
そもそもここ、尚早明和高等学校、通称そう高は男子校だ。
しかし、何故か学園祭でロミジュリやろうぜーということになり、じゃあヒロインどうするよ?いやそれはゆうりちゃん(男)だろ。
と、「かわいい」で有名な姫野ゆうりがヒロイン役に抜擢されたのだ。
一応ゆうり側も
「え、それやんなきゃだめ?やなんだけど。」
と断ったものの、いや、是非!先っちょ!先っちょだけでいいから!!とうるさいクラスメートに根負けし、渋々、本当に渋々「おーろみお。あなたはどうしてろみおなのー」となんの感情ももたないジュリエットを演っていた。
しかし、いかんせん可愛すぎた。
最初は、クラスの人気者がロミオをやることになり、
「まあ可愛いとはいえ男だろ?」
と余裕をぶちかましていたのだが、いざジュリエットならぬ姫野ゆうりを前にすると、
「アッ、かわいいッ」のだ。
たとえ、そのパッチリとした目が完全に死んでいたとしても、もう本当に可愛い。
なので、ロミオを演る者の条件がだんだん、「クラスの人気者」から「姫野ゆうりの可愛さに耐えられるもの」になるのは、とても自然な流れで。
先程ロミオをやっていた人物が、クラスの最後の一人であった。
「どうすんの監督、もう全員演ったよ?」
最初にロミオをやった例の人気者がたずねる。
ちなみに、その監督もロミオ役を経験済みだ。
監督は、
「これはもう、こうするっきゃねぇ!」
と突然叫びだし、姫野ゆうりにそっ、とサングラスをかけた。
おおおっ、とどよめくクラスメート達。
かくして、ここにグラサンをかけたジュリエットが誕生した。
その後、ロミオ役にクラスメート全員が立候補するという前代未聞の事件が起き、折衷案として、数分ごとにロミオを入れ替えることになった。
それを聞いた姫野ゆうりが、
「なんでだよッ!!」
とかぶっていたウィッグを投げ捨てたとかいないとか。
このことが学校全体に広がり、姫野悠里を取り巻くラブコメが展開されるとは知る由もない……。
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