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第2話 その男、襲来
「で、結局ロミオ役が変わりまくることになったのか?」
翌日のお昼休み。姫野ゆうりは部活が一緒なことをきっかけに仲良くなった、隣のクラスの永岡明人に会いに行っていた。
その、永岡がたずねる。
「そうなんだよ!わけ分かんなくない?てか、男にモテても別に嬉しくねーし!!」
姫野ゆうりという人間は、いわゆるノンケであり、普段可愛らしい格好をすることはない。しかし、元がいい故にやたら男にモテる。
「……まあ確かに、お前は本当に男好きするよな。」
「そうそう!今日の朝だって…」
永岡の言葉に姫野ゆうりが答えようとするも、それは叶わない。なぜなら、
後ろから抱きつかれたからだ。
「……ッツ!は!?」
不意をつかれ、体をこわばらせる姫野ゆうり。
一瞬にして戦闘態勢に入る永岡。
少しでも触れると切れそうな空気の中、その男が口を開く。
「おれ、ゆーりちゃんのこと好きになっちゃった!付き合ってくれない?」
「気安く名前を呼ぶな。」
もはや情けなど無し、と永岡が拳をその男にくらわせようとする。が、
「まって」
と姫野ゆうりが永岡を止める。そして、
「もしかして、朝の?」
とたずねた。
まだ殺気立っている永岡が、
「知り合いなのか?」
と聞くと、
「うん、多分だけどね。」
姫野ゆうりが答える。
「で、やっぱりそうだよね。というか断ったじゃん!てか、何回告白しに来てんだよ!」
「!何回も会ってるのか。」
「もう明人くんはしゃべらなくていいよ!」
姫野ゆうりを守ろうとしているだけの永岡、不憫である。
「……もういいかな?」
かなりの間おいて置かれた男が、先程の天真さは何処へやら、おずおずとした様子でたずねる。
「あ!ゴメン!!忘れてた!!」
ひどい。
「うあー。でも、おれのこと何回も告白してきた奴って覚えててくれて嬉しいな。」
この男、ポジティブである。
「それで、付き合ってくんない?」
「ダメだ。」
姫野ゆうりでは無く、永岡が答える。
「ちょっと明人くん!」
少し強めに注意する姫野ゆうり。
しかし、
「いや、言わせてくれ。」
と取り合おうとしない永岡。
「そもそも、お前は誰だ?」
「おまえに言う必要ある?」
バッチバチだ。
と、そこで姫野ゆうり
「ちょっ!なんか二人とも怖いよ!明人くん、この人は原康介って言って、二つ上の先輩!!それで、原くん!何度も断ってるでしょ!ほら、かえって!!」
強制的に締めにいく。
「……ふんっ、命拾いしたな。」
永岡が言うと、
「は?おれ、おまえなんかに殺られないから。」
突っかかる原。
「もー!!二人とも仲良くしようよー!」
姫野ゆうりの叫びも虚しく、どうやらこの二人はバッチバチになる運命のようで、
「またねゆーりちゃん!」
「だから、気安く呼ぶな!それに、“また”ではないだろ!!」
最後まで仲の悪い二人であった。
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