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「「「えええええーー!!!」」」
三人の叫びが食堂内に響き渡る。
「うるさいぞ原」
「いや、おまえも叫んでたでしょ!?」
やはり仲の悪い二人。
「えっえ!!?生徒会長が好きなの!?」
「そうなんです。だから、モテモテなゆうり様、いや、師匠に!その秘訣を教えてもらおうと……!」
テンションの上がる田口。
「いや、姫野は、モテたくてモテているわけじゃ…「秘訣とかないんだけど!??!」
動揺した姫野ゆうりが、永岡のセリフにかぶせながら言う。
「………え?秘訣、無いんですか?」
少し落ち着いた様子でたずねる田口。
「うん、なんというか、その……」
「ゆーりちゃんは、元がめちゃくちゃかわいいからモテるんだよねー!!」
原の無邪気なセリフに、凍りつく姫野ゆうりと永岡。
そして、田口は、
「やっぱり、そうなんですか……」
とつぶやき、それから何も喋らなくなってしまった。
流石に、「なんかやばいことを言ってしまった」ということを感じ取った原が、姫野ゆうりに小声で話しかける。
「ねえ、おれ、やばいことしちゃった?」
「まあな!!?この空気どうしてくれるの!?」
「お前のせいだぞ、原」
「ちょっと!言い方きついよ明人くん!」
「ううー、ゆーりちゃん好きー!付き合ってください!!」
「いや、付き合わないから!」
「どさくさに紛れて姫野に告白するな。お前の存在をなかったことにするぞ」
「怖」
「というか、本当にどうするんだ。何も喋らなくなったぞ」
「うーん…まあ、なんとかするっきゃないよ」
そう言うと、姫野ゆうりは、
「小太郎くん」と話しかけた。
「あの、さ、必ずしも顔だけってわけじゃないと思うよ。だって多分、ボクの性格がキングオブくそだったら、誰も好きになってくれないと思うし、それに……「分かりました」
姫野ゆうりをさえぎりつぶやく田口。そして、何処かへ走り去っていった。
その様子をポカーンと眺める三人。
しばらく経ってから、ハッとしたように声を出す。
「行ってしまったな……」
「うん…」
「……なんか、変なことにならないといいけど……」
しかしながら、その姫野ゆうりの予感は当たる事となる。
◇
翌日、姫野ゆうりがクラスにつくと、何やらクラスメートがザワザワしている。
よくよく見ると、大きめな人だかりがクラスの隅にできている。
どうやらその中心に話題になっている生徒がいるらしい。
何となく気になり、いそいそと人だかりに近づいて、その中心を覗き込むと……
そこには、一人の美少女がいた。
「え!?はああ!!?」
思わず叫ぶと、
周りのクラスメートが
「いや、大丈夫っす!たとえ、田口が見た目完全に女の子になってたとしても、俺は変わらずゆうり様が好きです!!」
だとか、
「一生ついていきます!ゆうり様!!」
だとかお門違いな案じ方をする。
しかし、“田口”って、まさか……
しばらくの間その美少女を見つめていると目があう。
そして、
「あ、師匠!」
と美少女は嬉しそうに言った。
この呼び方をする奴は、あいつしかいない。
「まじで、小太郎くん……?」
かくして、田口は栗色の髪が眩しい美少女になっていた。
その後、永岡と原のもとにも美少女にしか見えない田口を連れて行くと、
またもや
「こたろーくんがこたろーちゃんになったとしても、おれは変わらずゆーりちゃんが好きだよ。」
と心外な案じ方をされた。
また、永岡は、尋常ではないテンパり方を見せ、女嫌いが露呈した。
人生でも一ニを争う、濃い一日であった。
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