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第5話 無自覚天使と人工美少女
「ねえねえ、師匠。一緒に映画観に行こ?」
首を、「こてん」と可愛らしくかしげながら、小太郎くん…いや、こたろーちゃんが姫野ゆうりに話しかける。
まだあれから数日しか経っていないというのに、美少女が完全に板についている。
恐るべし!!田口小太郎!!!
「……え?何故突然…てか、映画なら生徒会長と行ったほうがいいんじゃない?」
このこたろーちゃん、何を隠そう生徒会長にぞっこんなのだ。
「うーん…ぼく、実際生徒会長と喋ったことないんだよねぇ。だからもういいかなって!みんなちやほやしてくれるしい〜?」
そう言うと突然
「ねえみんな〜♡」
とクラスメートに呼びかける。
すると、
「うおーー!愛してるぞーーー!!こたろーーー!!!!!」
叫ぶクラスメート達。
めっちゃ怖い。新興宗教かと思った。
というか、
「え!?生徒会長のことはもういいの!!?」
「うん♡だから、一緒に映画行こう!」
それにしても、性格変わりすぎじゃないか。確かに可愛いけど、可愛いけど!
ちょっと、前の控えめな小太郎くんが恋しい。
「まあ、いいよ全然。」
こうして、姫野ゆうりと小太郎は映画館のある「ネオン」に行くこととなった。
◇
「ネオン」についた二人は、何故か映画館に向かう前にロリータ系の服を扱うブティックに来ていた。
「やあ〜、来てくれてありがとっ!師匠☆実は、顔面を創り始めてから服にも凝り始めてて、普段はネットで買ってるんだけど、やっぱりおしゃべりしながらわいわいお買い物したいな〜って思ってたんだ。」
「そうなんだ…でも、ボク絶対に浮いてるよね?外で待っててもいい?」
「いや、全然浮いてないから、マジで。」
などと平和な会話を繰り広げる二人。
しかし、そんな二人をじっと見つめる怪しい影があった……。
「うん。もうこのくらいで良いかな。」
両手いっぱいに服を抱えた小太郎が言う。
「すごいたくさん買うね。」
「もっちろん!せっかく師匠が来てくれたんだもん。チャンスは無駄にしないようにしなきゃ。」
「そっか〜。でも、こんなにたくさん、持ち歩くの大変だよね?」
姫野ゆうりも、小太郎と同じ程の服を抱えている。
「あー…それは、大丈夫かな。」
「へ?」
「みんないるんでしょ?おいで〜☆」
小太郎が呼びかけると、棚の後ろに隠れていた怪しい影たち……ならぬ小太郎と姫野ゆうりの親衛隊が出てきた。
その数、ざっと40名。
「って、多いな!?」
姫野ゆうりが言うと、
「うーん?でも、今日は少ないほうだよ。昨日は100人くらいいたし。」
またしても度肝を抜かされる姫野ゆうりだった。が、この姫野ゆうり、気づいていないだけで、いつも400人程を引き連れている。
「じゃ、荷物はこの子達に持たせればいいから、早く買っちゃお!」
現在、時計の針は2時20分をさしている。映画が始まるのは2時30分なので、あと10分しか余裕がない。
しかし、小太郎とその親衛隊が、
「お金なら俺達が払います!!!」
「いや、いいよそんなの悪いよお」
と、何やら揉めている様子。
『このままじゃ映画が始まるっ…!』
焦った姫野ゆうりは財布を取り出し、
「はやく行こっ!!」
と言いながら服の代金を支払い、
小太郎の手をひいて親衛隊とブティックを後にした。
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