第5話 無自覚天使と人工美少女

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◇  「はあ…はあ…あー、ここまでくれば大丈夫……かな。こたろーちゃん、平気?」  話しかけるも、返事がない。  「こたろーちゃん?」  そう言って、小太郎の方を向くと、顔を赤らめ、胸をおさえるポーズでフリーズする姿が見えた。  「え!?顔赤いよ!大丈夫なの?小太郎……」  姫野ゆうりが、小太郎の肩に触れると、ビクリと体を動かす。    そして、  「う…………大丈夫だよっ☆」  と、明るい声を出してみせた。  「そう……?でも、辛かったら遠慮なく言ってね。……心配…だから。」  少し潤んだ瞳に見つめられる。  天使は存在したのだ。  後ろの方で、何かが倒れるような音が聞こえる。  おそらく、姫野ゆうりのファン達だろう。  「あ……うあ…」  またもや赤面する小太郎。  「ほんとに大丈夫!?」  この姫野ゆうり、無自覚である。  「もう!!はやく行こ!!!」  また心配しだした姫野ゆうりを強引に引っ張って、映画館に連れて行く小太郎。    既に映画は始まっている。   ◇  今回、二人が観に来た映画は、「あの日を君ともう一度」という感動モノだ。  ラストシーンで、小太郎が何気なく横をみると、姫野ゆうりが涙を流していた。    その姿が、あまりにもきれいで。    メイクが崩れるのを恐れ、泣くことのできない自分がどうしようもなく嫌になる。  「今なら会長の気持ち、すこぉしだけ分かるかも…」  そう、小さく小さくつぶやいた。        
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