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地下の手紙2
息子へ
この手紙を読んでいるということは、お前はダンジョン最奥部を目前にしているのだろう。
少し前に、王都ギルドがお前の強さを恐れ追放措置を取ったとの噂を聞いた。それほど力があるのなら宝箱に薬草が入っていなくとも平気のはずだ。
ということで薬草はこの老体の回復に使い、またも役に立たない手紙を忍ばせる。
死期が近いせいか、いざペンを走らせると心に浮かぶのは昔の出来事ばかりだ。母さんとの出会い、結婚、そしてお前の誕生と──
母さんの死。
深い悲しみを晴らしてくれたのはお前の成長だった。
小さなお前が地下室の壁を破壊した時、私は喜びに震えた。
ああ、何という才能だ! この子は私をはるかに凌ぐ魔道士になるに違いない。そして多くの人々を助け、苦しみから救ってくれるだろう……
不甲斐ない父にもそんな感動が息づいた日があったと知っていてくれ。
ところで、先程の忠告を覚えているだろうか。
お前の魔法の才能は私もよく知っている。だが強い力ほど使うべき時を誤ってはいけない。私には屋敷以上に心配なものがあるのだ。
それが何であるか、母さんを思い浮かべれば自ずと理解できると思う。
母の面影を忘却したなどと笑えない冗談を言ってくれるなよ?
暖炉の上の小さな肖像はそのままにしてある。まだ目にかけていなければ、一度戻って顔を見せてやってはどうだ。
つまらぬ説教は終わりなので安心してくれ。
病身に無理をして息苦しい。私の冒険はここまでのようだ。これを最後の手紙として筆を置き、お前の無事な帰還を祈っている。
思い出の家へ帰る父より
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