最後の手紙

1/3
前へ
/6ページ
次へ

最後の手紙

 この手紙を読んでいるということは、お前は最後の宝箱を開けたのだろう。  広大なダンジョンの攻略、本当にご苦労だった。  そう、伝説の大迷宮と言うのは真っ赤な嘘だ。  からっぽ、徒労、無駄足、あらゆるがっかりする単語を授けよう。「ふざけるなクソ親父」という悪態が聞こえてくるようだが、復讐したくとも私はすでに死んでいる。残念だったな。  お前は昔から命を敬う気持ちを持たない子供だった。  不治の病を得た私が後悔したのは、ただひとつ。息子に人間としての正しい優しさを教えてやれなかったことだ。  母さんの死は早すぎたが、それは言い訳にならない。片親であっても両親がいなくとも、立派に育った子はたくさんいるのだから。  責任は私にある。  だからこそ残された力のすべてを注ぎ、このダンジョンを用意した。  お前に心を与え直すために。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加