A ticket

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そこからは鮭三郎トークに花が咲いた。 あれほど自分には居場所がないと思っていた合コンの場で、こんなにも会話が弾んでいる自分に驚いた。 それもこれも濱田さんが鮭三郎を知っていたからなんだけれども、ネッ友ではなくリアルで鮭三郎の話をできる人と出会えたことが嬉しい。 それからは、いつの間にか濱田さんが頼んでいたらしい「炙りチーズサーモン」がテーブルに届きまたひと盛り上がりする。 第23話で、仲間割れした魔法戦士を忍んで鮭三郎が居酒屋で食べたメニューだ。 なかなか深みところまでアニメを見込んでいる濱田さんに感動しながらも、二人で「炙りチーズサーモン」を食べながらクスクス笑う。 濱田さんが「共食いじゃねえかッ!」の名台詞を披露したところで堪えていたものが弾けてゲラゲラ笑ってしまった。 大人しい人だと思っていたけど、濱田さんの中の関西の血がそうさせるのか、所々にネタを挟んでくる。 そのテンポとバランスが絶妙で、ひいひい言いながら笑う。 その時、ブブッとポッケに入れていたスマホが震えた。 机の下に隠しながら電源を入れると、結花からのメッセージだった。 『ちょっと〜? 乗り気じゃなかったくせに楽しんでんじゃん!』 ウフフ、と語尾にハートマークが着いたゴリラのスタンプも添えられている。 慌てて「そんなんじゃ無いし!」と返信すると、ニヤニヤ顔のスタンプが送られてきた。 もう、と心の中でため息をつく。 と、その時、ふと左端に表示されている時刻表示に目がいって「うわっ!」と悲鳴をあげた。
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