A ticket

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「どうしたの?」 向かいに座っていた濱田さんが驚いたように私を見る。 スマホは22:17を示していた。 「あああ、あの、えっと、あれですあれ! 私22時に持病の薬飲まないと行けなくてちょっと失礼します!」 「え、もうそんな時間?」 濱田さんのそんな声を聞き終わる前にトイレに駆け込んで個室に立てこもる。 いそいそとブログサイトを立ち上げて凌くんの新着記事を探す。 凌くんのブログの更新時刻は決まって22時だ。 「あれ? おかしいな、まだ更新されてない」 いつもなら星マークがついた新着記事が一番上にあるはずなのに、まだ昨日の投稿の記事が一番上のままだった。 毎日一日も休まず、それこそ風邪をひいた日も、本番前も千秋楽も22時にブログを載せていた凌くんだ。 「どうしたんだろ……まさか稽古で怪我!? だめだめ、縁起でもない」 画面を下にスワイプしてサイトを更新し続けること5分、遂に一番上に新しい記事が反映された。 タイトルは「綺麗な月。」 まずは「スタッフよりお知らせ」ではなかったことにホッと息を吐く。 ニヤニヤしながら記事をタップした。
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