(8)記憶の扉を開くカギ

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 ペット葬祭へ連れて行って荼毘(だび)()して。  遺骨を抱えてマンションに戻った記憶も蘇ってきた。  真っ暗闇の中、何もする気になれなくてルティの遺骨を抱きしめて眠って。  それから――。  その頃にはもう本の文字はちっとも頭に入って来ていなくて。  ルティシアのことを思い出して切ない気持ちが溢れんばかりにこみ上げて、気が付いたらポロポロと泣いてしまっていた。  自分が何も持たずにふらふらと町を彷徨(さまよ)っていたのと、ルティシアの死には何か関連があったのだろうか。  そこを思い出そうとしても頭に(もや)が掛かったようでちっとも思い出せない。  そればかりか、頭が割れるような頭痛までし始めて、その場にうずくまる羽目になってしまった。  畳に手をついて四つん這い。しばらく痛みに耐えながら、見るとはなしに目の前の棚に視線を向けた不破(ふわ)だったけれど。  どうも日和美(ひなみ)は先に不破が読んだ一冊目、『犬だと思ったら~云々(うんうん)かんぬん』の作者〝萌風(もふ)もふ〟とやらのファンらしい。
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