(8)記憶の扉を開くカギ

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 その作者の本を中心にズラリと本が並んでいて。  さすがにここまで「好き!」を感じさせられたら気になってしまうではないか。  痛む頭を押さえながら何冊か手に取って表紙を見て。  中世ヨーロッパの王侯貴族が身にまとっているような(きら)びやかなドレスを着たヒロインや、いかにも王子さまでございと言った男たちが描かれた表紙に軽い嫌悪感を覚えてしまう。 (何でだろう。……僕はどうやらファンタジーものに拒絶反応があるみたいだ)  表紙絵はそこまでファンタジーしていないものもあるにはあったけれど、タイトルを見るとどう考えてもそれっぽいのばかりだったから、結局犬の本みたいにページをめくる事もなく棚に戻したのだけれど――。  何故か頭の中に、こういうジャンルの本はティーンズラブって言うんだっけ、と言う知識がふわりと舞い降りてきて、不破(ふわ)は「おや?」と思わされる。 (僕は……何故そんなことを知ってるんだ?)  ルティのことを思い出させてくれたことと言い、ファンタジーものに対する不可解な拒絶反応と言い、何故知っているのか分からないような妙な知識が突如降って来たことと言い……。 (この手のジャンルの本に触れたら何か思い出せるかも?)  不破がそう思ってしまったのも無理はないだろう。
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